【競馬】川田将雅が語る「ハープスターで今年は負けたくない」 (2ページ目)

  • 新山藍朗●構成 text by Niiyama Airo
  • JRA●写真

――川田騎手から見て、ハープスターは現段階で、持てる能力のどれくらいを発揮していると思いますか。

「桜花賞トライアルを、あんな楽な競馬で勝つわけですからね、どれくらいなんでしょう......。そもそも(ハープスターの能力の)マックスがどれくらいあるのか、ちょっと想像がつきません(笑)」

――そうすると、なんとも不可解なのが、阪神JFの敗戦(2着。1着=レッドリヴェール)です。昨年夏の新潟2歳S(8月25日/新潟・芝1600m。牡馬相手に3馬身差の圧勝)や、今回のチューリップ賞の強さと比べると、別の馬だったのかとさえ思ってしまいます。

「僕の中では(あの敗因については)いろいろと分析して、解決しています。最後はあの着差(ハナ差)まで詰めてきているわけですから、強い馬ですよ」

――ところで、ハープスターのデビューは、昨年7月の中京でした(7月14日/中京・芝1400m)。当時から、これほど強い馬になるという予感はありましたか。

「実は、僕はハープスターの兄(ピュアソウル/牡5歳)にも乗せていただいていたんです。彼はすごくテンションが高くて、前向き過ぎるタイプだったんですが、その妹であるハープスターは、同じディープインパクトの子なのに、まったくタイプが違います。おっとりしていて、調教でもなかなか前に進んでいこうとしませんでした。だけど、動かす(追う)と、終(しま)いはすごくいい脚を使う。それで、『この子(ハープスター)は走る』と思いましたね。実際、デビュー戦でも強かったですから。そうは言っても、ここまで強くなるとは、当時はまだ思っていませんでしたが」

――すると、心底「この馬はすごい」と思ったのは、2戦目の新潟2歳Sだったのでしょうか。あの、後方一気のゴボウ抜きは、見ていて鳥肌が立ちました。道中は最後方でしたが、あの位置取りはレース前から考えていたことですか。

「デビュー戦もそうでしたが、2戦目の新潟2歳Sも(スタートしてから)まったく前に進んでいこうとしないので、自然にあの位置になっただけです。馬のリズムで、あまり(前の馬群から)置かれないようにと気をつけながら乗っていたら、たまたま、あそこだったということです。それぐらい(ハープスターは)前に進んでくれない子なんです(笑)。直線を向いたときも、まったく手応えがなかったほどですから。

 しかも、ひと口に『最後方』と言いますが、あのときは、前の馬群にいる最後方の馬から、さらに3馬身くらい離されていました。道中、仕掛けても、仕掛けても進まないし、全然ハミ(※)も取ってくれませんでした。一瞬、『今日はもうダメなのかな』なんて思っていましたよ。それが、(直線の)内回りのところ(内回りコースとの交差地点。ゴールまで約350m)まで来たら、急にやる気を出しまして(笑)。それからはもう、(前の馬群をさばくのは)あっという間でしたね。でも(馬群を)つかまえ始めてからの1ハロン(200m)くらいは真面目に走っていましたけど、つかまえ切ったあとは遊んで(走って)ましたね(笑)」

※馬の口に噛ませる棒状の金具のこと。それが騎乗者の手綱につながっていて、騎手はその手綱からハミを通じて馬を動かす。

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