【競馬】ダービーも視野。「意外性の馬」レッドリヴェールを侮るな (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • JRA●写真

 同馬を所有する東京ホースレーシングの佐伯昌道氏は、同レースをこう振り返った。

「(レッドリヴェールの)小さな馬体にはあまりに過酷な馬場コンディションで、しかもあのときのレッドリヴェールは後方の位置取り。当日は、先行した馬がそのまま残るレースが多かったので、『さすがにこれは厳しい』と思いました。それなのにあの馬は、後ろから唯一追い上げていって勝ったのですから、本当に驚きましたね。あの小さい身体で『どこからそんなパワーが出るのだろう......』という気持ちでした」

 レッドリヴェールがもたらした驚きは、まだ続く。札幌2歳Sから約3カ月の休養を挟んで直行した、阪神JFだ。

 2戦2勝、前走で"男馬"を負かして臨む、同世代牝馬との決戦。GIとはいえ、その実績からすれば、本来なら最有力候補の一頭として胸を張って挑める一戦だ。しかし佐伯氏は、「決して強気にはなれなかった」という。

「札幌2歳Sの馬場は、とにかく特殊。あのレースを勝ったとはいえ、レッドリヴェールが良馬場でどこまでやれるかはわかりませんでした。また、2戦目があれだけ過酷だったので、反動も心配でしたし、休み明けでいきなりのGIというのも、普通に考えればプラスではありません。加えて相手は、新潟でものすごい勝ち方をしたハープスター(GIII新潟2歳Sで牡馬相手に3馬身差の圧勝)。レッドリヴェールにとって、不安材料のほうが、頭の中で多く浮かんでいたのは事実です」

 さらに、レース当日のレッドリヴェールの馬体重は、前走から8kg減って418kg。休み明けでありながらマイナスとなったその馬体重は、どうしてもネガティブなイメージにつながった。それらの不安はファンも同様に感じていたのだろう、レッドリヴェールの評価は5番人気。戦績からすると、かなり低いものになった。

 だが、ここでもレッドリヴェールは、周囲の懸念を覆(くつがえ)す走りを見せた。先に抜け出したフォーエバーモアとの叩き合いを制すと、間を突いて猛然と追い込むハープスターをもわずかに抑え込んだのだ。ライバルが直線で進路を探すロスがあったとはいえ、不安を一掃したレッドリヴェールの走りは、紛れもなく本物だった。佐伯氏も、レッドリヴェールの秘めた能力には改めて脱帽したという。

「阪神JFを見て、この馬には一般的な常識が通用しないのかもしれないと思いました。馬体の細さや休み明けのローテーションなど、こちらの常識で考えて見てはいけないな、と。そういう不思議な馬なのかもしれません」

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