【競馬】生産者も驚愕した、ディープブリランテのデビュー戦

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

 そして、ノーザンファームでの育成を終えたディープブリランテは、いよいよ栗東トレーニングセンター(主に関西所属馬が調教などを行なってレースに備える施設)へと入厩した。同馬を管理したのは、2年前のセレクトセールで当歳(0歳)のディープブリランテを絶賛した矢作芳人調教師。セレクトセールのときから、矢作師は同馬を「手掛けたい」とノーザンファームに懇願していたという。そうした縁もあって、ディープブリランテはこの厩舎に入ることになった。

 デビューに向けて調整が進む中、パカパカファームのフォーリングマネージャー(生産担当)である伊藤貴弘氏も、ディープブリランテのことをしきりに気にかけていた。

「矢作調教師がブログをやっていたので、そこにディープブリランテの話題が出ていないか、毎日のようにチェックしていました。その際、矢作先生がブログ内で(ディープブリランテへの)期待を語っているのを見る度に、うれしくなりましたね。その頃はもう、ディープブリランテの"大ファン"という感じでした」

 スウィーニィ氏がパカパカファームを開場した際、そのスタッフとして仲間入りした伊藤氏。牧場の歴史をすべて知る彼が、ここまで惚れこんだ馬は他にいなかったという。以来、ディープブリランテについて、伊藤氏は逐一チェックし続けた。

 はたして、ノーザンファームと矢作調教師の元で調整を重ねた2歳のディープブリランテは、いよいよデビューの日を迎えることとなった。パカパカファームから羽ばたいて、約1年半後のことだ。舞台は、2011年10月1日の阪神競馬場。第5レースの2歳新馬戦(芝1800m)だった。

 ディープブリランテは、断然の1番人気に支持された。単勝オッズは、1.2倍。矢作調教師の高い評価や、調教での動きの良さが、同馬への期待を確固たるものにしたのだった。

 良馬場の中、12頭立てのレースは幕を開けた。ディープブリランテはやや出遅れ気味のスタートだったが、すぐに挽回すると、道中はスムーズに追走。3コーナーから徐々にポジションを上げていき、最終コーナーでは大外から先頭に並びかけていった。

 このとき、パカパカファームのスタッフは、牧場のテレビの前に集まり、固唾(かたず)を飲んで成り行きを見守っていたという。競走馬は、たとえデビュー前から素質の高さを見せていても、それをレースで発揮できないことが少なくない。「ある程度は走ってくれるはず」と信じていた伊藤氏も、ゴールするまでは安心できなかった。が、最後の直線を迎えたディープブリランテは、そんな不安を一掃する素晴らしい走りを見せた。

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