【競馬】ディープブリランテは、生後わずか15分で起き上がった (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 写真提供:パカパカファーム

 スウィーニィ氏と伊藤氏が立ち会って行なわれたラヴアンドバブルズの出産。伊藤氏曰く「お産は極めて順調だった」という。

「2時頃からお産が始まって、2時30分にはすでにディープブリランテが生まれていました。お産はほとんど苦労することなく、すぐに生まれた記憶が残っています」

 一緒にその様子を見届けたスウィーニィ氏は、ディープブリランテが生まれた瞬間をこう振り返る。

「出産で一番大切なのは、生まれた仔馬が元気かどうか。ディープブリランテはとても元気でした。身体も非常に健康でした。まずそこでひとつ安心したことを覚えています。そして、その次に見るのが、仔馬の性別。生まれた仔馬が牡だとわかって、正直なところホッとしました」

 競馬界で最高峰に位置するタイトルは、日本ダービー(東京・芝2400m)。馬主や調教師は、毎年ダービーを勝てる馬を探して牧場やセリ市を訪れると言っても過言ではない。そのダービーを勝つためには、身体能力に勝る牡馬であることが大きな条件。歴史をひも解けば、2007年のウオッカのように牝馬ながらダービーを制した馬もいるが、基本的には牡馬が手にするタイトルだ。

 そのため、サラブレッドの市場では、牡馬の需要が高く、牝馬に比べてずっと高い評価になる。スウィーニィ氏が「牡だとわかってホッとした」のは、これが理由だった。

「ひと通り健康状態をチェックしてから、生まれた仔馬の馬体をよく見たとき、本当に『素晴らしい』と感じました。生まれたばかりですから、もちろんまだそれほど筋肉は付いていませんが、とにかく骨格が大きく、骨も太かったのです。サラブレッドの馬体は、生まれたばかりでもかなりの個体差があります。ディープブリランテは間違いなく素晴らしい馬体の持ち主でした」(スウィーニィ氏)

 生まれたばかりのディープブリランテに抱いた大きな期待。それは伊藤氏も同じだった。

「僕から見ても、他の馬とは見た目がまったく違いました。骨格がよく、脚も真っ直ぐで、素質と力強さを感じましたね。何より、生まれてから立ち上がるまでの時間がとても早かったんです。確か、15分くらいで、仔馬としてはとても早いほうでした」

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