【競馬】春のクラシックは、2014年もディープ産駒が「主役」 (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • 山根英一/アフロ●撮影

 一方、2歳牡馬の頂点を決する朝日杯フューチュリティーS(以下、朝日杯FS/12月15日/中山・芝1600m)は、1番人気に支持されたアトムが5着に沈んだ。また、例年クラシックとの関連が深いと言われるラジオNIKKEI杯2歳S(以下、ラジオNIKKEI杯/12月21日/阪神・芝2000m)も、1番人気のサトノアラジンが3着にとどまった。

 勝ち馬は、朝日杯FSが4番人気のアジアエクスプレスで、ラジオNIKKEI杯は7番人気のワンアンドオンリーだった。それぞれ2着馬も人気薄が飛び込んできて(朝日杯FS=6番人気ショウナンアチーヴ、ラジオNIKKEI杯=8番人気アズマシャトル)、馬連は朝日杯FSが7710円、ラジオNIKKEI杯は1万460円という高配当となった。この馬券の荒れ具合こそ、牡馬の混戦ぶりを物語っている。

 こうした状況にあって、牡馬クラシック戦線はいまだ未勝利の馬でもチャンスがあると言われ、競馬関係者の間では「牡馬がこの程度のレベルならば、ウオッカ(2007年)以来となる牝馬のダービー馬が誕生してもおかしくない」という声まで挙がっている。

 しかし、そうした見方に対して、異論の声もある。

 クラシック有力候補の牡馬に騎乗する、あるベテランジョッキーが、牡馬のレベルは決して低くないとして、こう語ったのだ。

「自分が主戦を務める馬と比較しても、『あの馬には勝てない』と思わせる馬が2頭いる」

 一頭は、ここまで2戦2勝で、オープンの京都2歳S(11月23日/京都・芝2000m)を勝ったトーセンスターダム。2012年のセレクトセール(競走馬のセリ市)で、2億5000万円で取引されたこの世代随一の高額馬だ。これまで「高い馬は走らない」と言われることが多かったが、この馬はそのジンクスにピリオドを打つと期待されている。

 もう一頭は、前走で500万下の黄菊賞(11月9日/京都・芝1800m)を勝利したトゥザワールド(3戦2勝)。名牝トゥザヴィクトリーを母に持つ、良血馬だ。

 前出のベテランジョッキーは、この2頭を高く評価して、さらに熱弁をふるった。

「トーセンスターダムとトゥザワールドは、どちらもゴール前の終(しま)いの脚に見るべきものがある。この先、まだまだ伸びるという成長力も感じさせる。この2頭は、クラシックに向けて有望ですよ。暮れの重賞を勝った馬たちは、現時点の完成度が高いだけ。素質は、この2頭のほうが上です。いずれ、重賞勝ち馬にも追いつき、追い越すはず。牡馬は『混戦』ではなく、この2頭の『2強』と言えるんじゃないかな」

 確かに、そのレースぶりや、血統に後押しされた競走馬としてのスケールの大きさでは、朝日杯FSを制したアジアエクスプレスや、ラジオNIKKEI杯を勝ったワンアンドオンリーより、トーセンスターダムとトゥザワールドのほうに魅力を感じる。ベテランジョッキーの見立てと、彼が言う"伸びしろ"も加味すれば、今後この2頭が「2強」と呼ばれる可能性は十分にあるだろう。

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