【競馬】凱旋門賞、現地メディアが語るオルフェ&キズナの「勝算」 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

 取材を担当したレーシングポスト紙の記者スコット・バートン氏は、記事執筆前に凱旋門賞の展望をこう語っていた。

「私の本命は、オルフェーヴル。対抗にトレヴ(牝3歳/フランス)、3番手にノヴェリスト、続いてキズナです。これは、お世辞でもなんでもありません。上位の2頭の力は拮抗しているとは思いますが、フォワ賞の内容と今日の追い切りの動きから(オルフェーヴルの勝利を)確信しました。もう、去年のようなこと(ゴール前で失速して2着)はないでしょう。欧州の各陣営も"挑戦者"を迎え撃つという気持ちではないみたいですよ。『我々が挑戦者』といった意識のようです」

 オルフェーヴル陣営と同じ宿舎を利用し、調教前後の準備運動やクールダウンでも同じコースを使うことが多いという、カタールのベリーナイスネーム(牡4歳/フォワ賞2着馬)の関係者も、オルフェーヴルにはお手上げの様子だった。

「(オルフェーヴルのことは)毎朝のように見るけれども、体はそれほど大きくないのに、力強さが他の馬とは比較にならない。ベリーナイスネームの出来にも自信はあるが、正直どこまで食らいついていけるのか......。今回(凱旋門賞)は、遠征を計画しているジャパンカップ(11月24日/東京・芝2400m)へのいい指標になればと思っている」

 一方で、「キズナにこそチャンスあり」と唱える識者もいる。フランスの女性記者イサベル・マシュー氏だ。

「フォワ賞を快勝したオルフェーヴル。休み明けとしては、合格点を与えられる内容だったと思います。ただし、これといった有力馬が出走しておらず、レースのレベルには疑問符がつきます。翻(ひるがえ)って、ニエル賞を勝ったキズナは、レース内容も素晴らしかった。良化途上にありながら、2着ルーラーオブザワールド(牡3歳/アイルランド)に、抜かれそうで抜かされなかった。その最後の粘りが実に評価できます。そして何より、凱旋門賞に強いとされる3歳馬。ニエル賞で破ったライバルたちも、本番では良化してくるでしょうけど、私はさらに上積みが見込めるキズナがいちばん勝利に近いと考えています」

 さて、海外メディアから極めて高い評価を受けているオルフェーヴルとキズナだが、決して予断を許さない。「挑戦者」と吹聴していても、日本の馬には負けられないと、虎視眈々と逆転を狙っている欧州陣営の壁は厚い。なかでも、前述のふたりの記者、バートン氏とマシュー氏が「最大のライバル」と口をそろえる、トレヴの存在は脅威だ。

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