【競馬】ブリンカーやチークピーシズが競走馬にもたらす効果とは (2ページ目)

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ボア状のチークピーシズは、馬の頬の部分に取りつけて横や後方の視野を狭める。ボア状のチークピーシズは、馬の頬の部分に取りつけて横や後方の視野を狭める。 また、ブリンカーと同様、視野を狭めるための矯正馬具として、チークピーシズを使用する場合があります。チークピーシズは、ブリンカーとは違った形状で、馬の頭絡(とうらく/手綱につながっている、馬の頭部に取りつけられた革ヒモ製の馬具)の頬革(ほおがわ)に着けるボア状のものです。これも、後方の視界を気にする馬には有効で、浅めのブリンカーと効果は一緒です。

――ブリンカーやチークピーシズを着用すれば、どんな馬でもレースに集中できるのでしょうか。

秋山 そうとは言い切れません。かつて私が管理していた馬の中にも、ブリンカーを装着したことが逆効果になったというケースがありました。どうしてかというと、視野を狭められたことで、逆に恐怖心を覚えてしまったからです。もともと競走馬は草食動物ですから、臆病な面があります。それまで見えていたものが見えなくなれば、不安を感じるのは当然です。結果として、ブリンカーをつけた途端に、まったく動かなくなってしまった馬がいました。

 それに、調教で効果があったからといって、レースでもいい結果に結びつくとは限りません。というのも、調教とレースとでは、馬の精神状態がガラッと変わってしまう場合があるからです。(普段過ごしている)トレセンで調教として走るのと、競馬場に行ってレースを走るのとでは、まったく別モノですから。

 さらに、ブリンカーやチークピーシズによって「集中力を増す」ということが、諸刃の剣になることもあります。

 レースにおいては、ある程度息を入れて、緩急をつけて走るのが大事です。それは、長距離のレースだけでなく、マイル(1600m)や短距離、1000mの直線競馬でも同じです。ところが、ブリンカーやチークピーシズを着用したことで、馬が集中し過ぎて、むきになって走ってしまい、スピードがコントロールできなくなってしまった、というケースが稀(まれ)にあります。

 それで、普段のトレーニングや追い切りのときだけブリンカーやチークピーシズを着用して、レースではあえて使用しないこともありました。「なんで?」と思われるかもしれませんが、調教のときだけブリンカーを使うことで意図的にむきに走らせて、レースでは緩急のついた走りができるようにしたかったのです。

 何はともあれ、ブリンカーやチークピーシズに限らず、矯正馬具はレースの結果を見ながら使用してみたり、使うのをやめたりというのは頻繁にあります。そして、どういうものが合うのか、調教師たちは日々試行錯誤を繰り返しています。

――次回は、三冠馬ナリタブライアンのトレードマークにもなった、シャドーロールについて教えてください。
(つづく)

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