【競馬】外国人牧場長はなぜ、廃校となった小学校を買ったのか (2ページ目)

  • 河合 力●文 text&photo by Kawai Chikara

「体育館がついているのも大きな魅力です。雪が多い冬でも、好きなだけフットサルやバスケットボールをできますから。例えば、この辺の牧場スタッフでサッカーチームをいくつか作って、週1回ここで集まって遊ぶのはどうでしょうか。日高には、スタッフが1、2名の牧場もたくさんあります。ウチのスタッフはもちろん、そういった牧場のスタッフも、みんなで遊べる機会があったらきっと楽しいと思うのです」

 体育館だけでなく、かつて小学生たちが利用していたプールも、もちろんパカパカファームのものとなった。このプールの活用についても、スウィーニィ氏は無邪気な笑顔を浮かべながら、あるプランを教えてくれた。

「アイルランドで人気があるパーティーのひとつに、水着でプールに集まりバカーディ(※『ラム酒』のカクテル)を飲む、『ビキニ&バカーディパーティー』というものがあります。今の私の目標は、いつかこのプールで『ビキニ&バカーディパーティー』をやることですね」

 なお、買い取ったこの施設の名称については、「『パカパカ道場』にしようと思っています」と笑った。それ以外にも「パカパカスクール」や「パカパカ大学」などが候補に挙がったようだが、スウィーニィ氏の中では、「パカパカ道場」がもっともお気に入りのようだ。

 スウィーニィ氏がスタッフの労働環境だけでなく、生活環境にまで気を配る背景には、厳しい牧場の仕事に対する彼なりの考え方があった。

「牧場の仕事は、まさに日本で言うところの『3K』 です。きつい、汚い、危険。ウチの場合は、社長が『ケチ』というのもあるでしょう(笑)。だからこそ、せめてシステムや設備の面だけでも良いものにしなければなりません。先ほどの独身寮だけでなく、牧場の施設をなるべくきれいにしたり、カラーリングにこだわったり......、そういった小さな部分に配慮して、少しでもスタッフにやりがいを与えられればと考えています」

 競馬雑誌などに求人広告を出しても、「最近は、応募してくる日本人がほとんどいなくなってしまった」と、険しい表情を見せるスウィーニィ氏。規模の大小にかかわらず、サラブレッド生産を行なうほとんどの牧場が人手不足に悩まされている現状だからこそ、スタッフへの配慮を一層厚くしなければならないと彼は考えている。

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