【競馬】小牧場オリジナルの飼料「パカパカミックス」はこうして開発された (2ページ目)

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

 開場以来、いろいろな国から飼い葉を取り寄せてきたスウィーニィ氏。そして3年前、彼は『パカパカミックス』を開発する。このミックスの開発過程において、彼の海を越えたコネクションは存分に生かされていた。
 
「『パカパカミックス』を作るにあたり、ケンタッキーから知り合いの専門家を呼んで、何度も牧場の土壌検査を行ないました。カルシウムがどれくらい牧場の土に含まれているかなど、成分分析をしてもらったのです。また、土地の傾斜や、パカパカファームにおける馬の管理法も細かく見てもらいました。そのような分析を経て、ベストの飼い葉を作っていったのです」

 このようにして3年前に出来上がった『パカパカミックス』は、その後何度も改良を加えられた。現在使われているミックスは、1年前に完成したものだ。その中身については「もちろん、企業秘密」と言って、スウィーニィ氏は満足気に笑った。

「確かにお金はかかりましたが、『パカパカミックス』の開発には満足しています。まだまだ改良の余地はありますし、飼い葉だけで馬が良くなるわけではありませんが、このミックスの開発は、パカパカファームのひとつの成果と考えて良いと思っています」

 この独自飼料は、すでに特許を取得。赤・黒・白という、パカパカファームお馴染みのカラーリングが施されたパッケージに包まれて、「PACA PACA MIX」の文字が印字されている。飼料としてのクオリティの高さから、他の牧場や競馬関係者からの引き合いもありそうだが、販売する意思は今のところないそうだ。

「このミックスは、とにかく『パカパカファームの生産馬に合うもの』を目指して開発しました。そのため、ここの馬にとっては良いものでも、他の牧場の馬たちに合うとは限りません。決して、どの牧場にでも合うようなものではないのです」

 確たる狙いと、そのために必要なコネクションを駆使して開発された『パカパカミックス』。今後もこの飼料は、活躍馬を輩出する要素のひとつになるだろう。

 来日以来、独自のやり方を貫いてきたスウィーニィ氏。彼の斬新な手法は、牧場スタッフに対しても同様で、他の牧場にはない、珍しい取り組みが行なわれていた。次回は、スウィーニィ氏のスタッフに対する接し方に迫る。

(つづく)

  ハリー・スウィーニィ

1961年、アイルランド生まれ。獣医師としてヨーロッパの牧場や厩舎で働くと、1990年に来日。『大樹ファーム』の場長、『待兼牧場』の総支配人を歴任。その後、2001年に『パカパカファーム』を設立。2012年には生産馬のディープブリランテが日本ダービーを制した。
『パカパカファーム』facebook>

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