【競馬】ダービーで夢託すのは、
名牝に由来する福永祐一とエピファネイア

  • 長谷川仁志●文 text by Hasegawa Hitoshi

 自らの信念は「男は負けを覚悟しても戦場に赴(おもむ)くもの」。1997年には、"未完成"とわかっていながら、サイレンススズカに◎をうった。結果は9着惨敗も、のちに歴史的な「快速馬」となる素質に見当違いはなかった。

 キングカメハメハ(2004年)にディープインパクト(2005年)、そして64年ぶりに牝馬で勝利したウオッカ(2007年)らは、驚くべき時計と圧倒的な強さを披露。日本のサラブレッドの進化に、興奮と喜びを感じながら、その偉業を伝える責任を覚えた時期だ。

 2年前は震災後、6週間の開催中止。福島に新潟、競馬開催地から入る知人の悲劇に、さまざまな想いが錯綜(さくそう)した。でも雨の中、ダービーの返し馬へ行く18頭を見て、ただただ美しいと感じた。

 直後、レースで最高の輝きを見せたのは、オルフェーヴル。泥を被(かぶ)り、ナカヤマナイトに被されて、それでもこじ開けて出てきた。その感動は生涯、忘れられない。

 大好きな『ダービーニュース』の本紙担当として印をうてて、ダービー当日にラジオで解説もして......。その幸福に身震いするような20年だった。

 だからという訳ではないが、今、その場を離れて、今年のダービーだけは机上よりも私情を大事にしたいと考える。

 2005年に日米のオークスを制したシーザリオは、美しくて大好きな牝馬だった。クラシックの直前、彼女が臨んだフラワーCでは『ダービーニュース』の一面上に、「世界にひとつだけの花シーザリオ」の見出しが躍った。スーパーアイドルグループが歌う曲の"ぱくり"とはいえ、これまでの最高傑作と自負している。

 また、シーザリオの鞍上・福永祐一も、ダービーでは、伏兵アサクサキングスで2着(2007年)、昨年は1番人気ワールドエースで敗走(4着)した。数々の経験を踏まえて、もう勝ってもいい円熟期にある。

 図らずも、パートナーのエピファネイアはシーザリオの子。ハイレベルの皐月賞で2着。あれだけ折り合いを欠いて、ロゴタイプより外を回って、着差が半馬身なら、能力差はほとんどない。直前のソエ(若馬に見られる脚部の炎症)うんぬんも追い切りが良かったし、熱発明けの新馬を楽勝しているように、体質は弱くても芯は強い。

 勝てば5勝目の武豊(キズナ)でもなく、20歳のC・デムーロ(ロゴタイプ)でも、もちろん横山典弘から乗り替わった「行きたがり屋」のウィリアムズ(コディーノ)でもない。

 祐一に、「世界にひとつだけの花」の孝行息子に、勝たせて酔いたい。そんなダービーだ。


長谷川仁志(はせがわ・ひとし)
1957年2月27日生まれ。東京都出身。父の影響で少年時代から競馬に親しむ。1981年、競馬専門紙『ダービーニュース』に入社。1994年から『ダービーニュース』の本紙予想を担当。この春まで20年間、豊富な知識と経験で馬の能力を的確に把握し、高い的中率を誇った。1988年からは『ラジオ日本』競馬実況中継の解説を担当。他、グリーンチャンネルへの出演など活躍の場は広く、競馬界では欠かせない存在。

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