【競馬】繁殖牝馬シルバーレーンが新興牧場にもたらした「奇跡」 (2ページ目)

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

 アメリカの競走馬フレンチデピュティは、GI勝利などの実績はないものの、種牡馬入り後、産駒のクロフネやノボジャックなどが日本で活躍。2001年に社台グループが輸入し、注目を集めていた。

「シルバーレーンの配合相手として、最初からフレンチデピュティを考えていたわけではありません。しかし、シルバーレーンの馬体を見るうちに、『フレンチデピュティと相性がいいのではないか』と思うようになったのです。それで、この2頭を配合することに決めました」

 併せて、フレンチデピュティが、ブラックホークの父ヌレイエフと同じノーザンダンサー系の種牡馬であることも、スウィーニィ氏の決断を後押しさせた。そうして生まれたのが、牝馬のピンクカメオだった。

「ピンクカメオが生まれたとき、両親の特徴が受け継がれた、良い馬体の持ち主だと思いましたね。『ある程度は走ってくれる』という自信もありました。ただ、フレンチデピュティの子はダートでの活躍が多かったですから、芝適性において、若干の不安はありました」

 ピンクカメオは、2004年のセレクトセールに上場され、兄ブラックホークのオーナーである金子真人氏が7100万円で落札。2年後の2006年にデビューすると、スウィーニィ氏の心配をよそに、芝レースで順調に白星を重ねた。5戦目には、オープンの菜の花賞でも勝利を飾って、牝馬クラシック第1弾の桜花賞に駒を進める。

 迎えた大一番は、さすがに甘くはなかった。のちに名牝と称されるダイワスカーレット(1着)、ウオッカ(2着)の激闘から大きく離れて、14着と大敗を喫した。4戦目の阪神ジュベナイルフィリーズでも8着に敗れており、「GIでは力が足りない」という評価が大方を占めた。

 にもかかわらず、ピンクカメオが桜花賞後に向かったレースは、なんと強力な牡馬を含めた同世代のトップマイラーが集うGI、NHKマイルカップだった。牝馬で、しかも桜花賞での大敗からして、誰もが無謀な挑戦と感じていたのは間違いない。その証拠に、18頭立て17番人気の低評価だった。が、シルバーレーンの娘は、この大一番で驚愕の走りを披露。大金星を挙げた。

 単勝は7600円。2着は1番人気のローレルゲレイロだったが、馬連は3万800円の高配当となった。3連単にいたっては、3着にも18番人気のムラマサノヨートーが飛び込んできたため、当時のJRA重賞史上最高の900万円を超える配当を記録した。

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