【競馬】福永騎手が語る桜花賞
「最も魅力を感じるのは、ディープの妹」

  • 新山藍朗●取材・文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

――他に気になる馬はいますか。

「チューリップ賞で1番人気(7着)だったレッドオーヴァルに注目しています。なにしろ、その前のレースの紅梅S(1月14日/京都・芝1400m)では、直線の弾け方がすごかったですからね。しかも、このとき2着に負かしたのが、フィリーズレビューを制したメイショウマンボ。チューリップ賞では7着に敗れましたが、先ほど話したとおり、末脚勝負のこの馬は、直線の向かい風の影響をかなり受けたはず。その結果を参考外とすれば、この馬にもチャンスはあるでしょう。同様に、チューリップ賞で9着だった2歳女王のローブティサージュにも可能性はあります。阪神JFを制してから3カ月ぶりの実戦を叩いて、今度の桜花賞では変わってくると思いますからね」

――福永騎手はプリンセスジャックに騎乗予定です。阪神JF6着、チューリップ賞8着と、厳しい結果が続いていますが、勝算はありますか。

「ここ数戦の成績は今ひとつですが、今年のような混戦なら、まったくノーチャンスということはないと思っています。ひとつでも上の着順を目指してがんばりたいです」

――どの馬にもチャンスがあるとなれば、そのことがジョッキーの心理に影響するということはありませんか。

「みんな、一発狙ってきますからね(笑)。当然、意識過剰になるということはあるでしょう。そういう状況では、本当は逃げ馬じゃないのに『思い切って逃げてみよう』と考える騎手が必ず出てきます。もし、そんな考えを持った騎手が何人もいれば、ペースは速くなります。そうした状況に惑わされず、流れをきちんと読むのも騎手の腕。そういう意味では、今年の桜花賞は騎手の心理戦という一面もありそうですね」

――こうしてお話をうかがって、やはり今年の桜花賞は「混戦」であることを改めて実感しました。最後に、桜花賞の出走馬が持ち合わせるべき、大一番で勝つために必要な要素は何でしょうか。

「ひとつ言えることは、本番を目前に控えたこの時期に、グンッと良くなっていく馬でないと、クラシックで勝ち負けするのは難しいということです。例えば、Aという馬とBという馬がいたとして、2歳の秋から暮れにかけては、Aという馬にBという馬はまったく適わなかったのに、3歳春になると立場が逆転することがあります。これは、Bという馬が2歳時にはまだ完成し切れていなかったから起こることです。そんなふうにして、以前の力関係を逆転するくらいの力をつけていくことが、『良くなっていく』ということ。この時期に、そういう成長曲線を描ける馬でなければ、クラシックで勝ち負けすることはできません」

――ありがとうございました。福永騎手のご活躍を期待しています。
  
福永祐一(ふくなが・ゆういち)

1976年12月9日生まれ。JRAを代表するトップジョッキー。2011年には、全国リーディングジョッキーに輝いた。通算1494勝。重賞97勝(うちGI16勝)。2013年は、36勝(全国リーディング3位)。※4月5日現在

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