【競馬】フェブラリーS、初ダートのカレンブラックヒルが期待されるワケ (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu

 ふたつ目は、今回出走するメンバーに絶対的な主役が不在という点にある。エスポワールシチー、テスタマッタ、ワンダーアキュートらは、過去に実績があるとはいえ、年齢的に衰えが見えるのは否めない。2年前のジャパンダートダービー(大井・ダート2000m)を制したグレープブランデー(牡5歳)も、前走の東海S(1着/中京・ダート1800m)で復活を遂げたとはいえ、パンチに欠ける。底を見せていないイジゲンやガンジスの4歳勢にしても、「同じ未知の魅力なら、カレンブラックヒルのほうが......」と思わせるレベルに過ぎない。

 まして、東京のダート1600mは、スタート後150mは芝コースを走る。その点では、コテコテのダート馬よりカレンブラックヒルのほうにアドバンテージがある。能力の高さは誰もが認めるところで、抜群のスタートセンスを誇るカレンブラックヒルがここでスピードに乗ってしまえば、そのまま一気に押し切っても不思議はない。

 3つ目は、その血統だ。父ダイワメジャーは、現役時代の初勝利をダート戦(中山・ダート1800m)で挙げている。それも、後続を楽々と9馬身もちぎる内容だった。このレースを含めて生涯ダート戦は2戦しかしていないものの、近親には中央、地方を合わせてダートGI9勝のヴァーミリアン(GI・JpnI9勝)などがいたこともあって、ダイワメジャーのダートの潜在適正は計り知れないものがあったと言われている。

 また、母父のグラインドストーンは、アメリカのケンタッキーダービー(ダート2000m)の勝ち馬で、種牡馬としても米GI3勝のバードストーンを送り出した。そのうえ、そのバードストーンも、ケンタッキーダービー馬となるマインザットバードなどの父となった。まさにカレンブラックヒルの血筋には、ダートの大物のDNAが色濃く含まれているのである。

 最後のひとつは、カレンブラックヒルの今年の最大目標にある。昨年、獲り損ねた天皇賞・秋という話も出ているが、オーナーサイドの希望でアメリカへの長期遠征が計画されているという。そして、その視線の先には、アメリカ競馬最大の祭典ブリーダーズカップ(11月・サンタアニタパーク競馬場)出走がある。

 現時点では、ブリーダーズカップマイル(芝1600m)を最有力としているが、今回のレースでダートに高い適正を示したならば、同祭典の最高峰のレースであるブリーダーズカップクラシック(ダート2000m)という選択も加えられる。それほど大きな目標を持った馬だけに、いやがうえにもその走りに注目が集まるのだ。

 二冠馬ゴールドシップは有馬記念を制し、牝馬三冠馬ジェンティルドンナはジャパンカップでオルフェーヴルを撃破した。昨年後半、同世代の馬たちが強烈なインパクトを残して、世界へ羽ばたこうとしている。はたして、カレンブラックヒルは、彼らに続いて未来を切りひらくことができるだろうか。

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