【競馬】凱旋門賞制覇にも匹敵する、ロードカナロアの歴史的快挙 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

 ロードカナロアは、管理する安田調教師が昨年の秋の段階で「来年はこの馬で......」と期待を寄せていた馬だ。当時すでに、同じ厩舎のカレンチャンが短距離女王としての地位を確立しつつあったのにもかかわらず、である。そして期待どおり、年が明けて3月、初のGI出走となった高松宮記念こそ3着に敗れたが、2度目のGI挑戦となった9月のスプリンターズS(1着)では、カレンチャンを下して世代交代を実現させた。スプリンターズS後は、すぐさま香港スプリントに照準を定めた。

 厩舎としても、昨春ドバイワールドカップでトランセンドの2着という好走実績を持ち、海外遠征に対して必要以上に気負うところがなかったのは大きい。香港遠征も、前年のカレンチャンの参戦(5着)で経験済みで、今回はそのカレンチャンもともに遠征することで、単騎遠征によるリスクも回避することができた。

 12月1日未明に現地入りしたロードカナロアは、環境が変わった影響もほとんどなく、順調に調教を消化。レースを4日後に控えた12月5日の最終追い切りでは、実戦でも騎乗する岩田騎手が跨(またが)り、「乗った感触から状態が良いのがわかる。力みもなく、順調にきている」と、レースに向けての好感触を確かめた。さらにレース前日の土曜日には、追い切りに近い強め調教で、ロードカナロアの闘争心にスイッチを入れた。

 馬体重は主催者発表で1091ポンド(約495kg)と、前走のスプリンターズSからは約1kgの差。完璧な状態でレースを迎えたロードカナロアは、完璧な内容で他馬を圧倒した。

 好スタートを切ったロードカナロアは、逃げる地元のセリースチェリーらに無理に付き合わず、自分のペースで3番手を追走。直線に向いて、馬場の真ん中に進路を取ると、残り150m付近で逃げるセリースチェリーを捕らえ、後続に2馬身半の差をつけてゴールに飛び込んだ。香港スプリントとしては、歴代2番目の着差による圧勝劇。どこまでも埋まらないと思っていた差に、お釣りをつけて返すほどの、非の打ち所のないレースぶりだった。

 レース後、安田調教師は「世界一のレースだと思っていたこのレースを勝てて、夢のよう......」と言葉を詰まらせた。

 ひとレースごとに成長を続けるロードカナロアは、この秋だけで一気に日本の頂点を極め、世界の最高峰まで登りつめた。世界の各メディアからは、イギリス、シンガポール、オーストラリアなどへの遠征を期待する声が早くも上がっている。

 王の意味を持つ冠名「ロード」に、海の王の意味を持つ「カナロア」。王の中の王を目指して、ロードカナロアの成長と挑戦は続く。

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