【競馬】ジャパンカップ、今年は外国馬から不気味な勝負気配が漂う

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

 状態面を不安視する声もある。過去、その年の凱旋門賞馬がジャパンカップに挑戦したのは、6頭。最高成績は、1996年のエリシオの3着だった。1999年にエルコンドルパサーを凱旋門賞で下し、勇躍来日したモンジューも4着止まり。昨年のデインドリームも、凱旋門賞を2分24秒4という超高速決着で制しながら、6着に甘んじた。これには、前述の馬場適性だけでなく、大目標である凱旋門賞ですでに馬のピークは過ぎていた、と考えられている。そしてその後、長距離輸送を経ての海外遠征では、ベストの状態でなかったとしても不思議はない。ましてや、ソレミアはこれが初めてのフランス国外の競馬。不安視されるのは無理もない。

 そのため、ラフォンパリアス調教師は調教後も慎重なコメントに終始していたが、逆にその冷静な対応が不気味。関係者筋によれば、「凱旋門賞を勝った時点でJRAもソレミアを招待する態勢を整えたが、調教師からはそれよりも早く、JRAにジャパンカップ出走の意思を伝えてきた」という。おまけに、鞍上はビッグレースほど勝負強く、ジャパンカップも2度制している名手オリビエ・ペリエだ。あまり評価を下げると、痛い目を見るかもしれない。

 オーストラリア最大のレース、メルボルンカップ(芝3200m)から転戦してきた、ジャッカルベリー(イギリス/牡6歳)、マウントアトス(イギリス/せん5歳)、レッドカドー(イギリス/せん6歳)の3頭も侮れない。かつてオーストラリアからの招待馬がメルボルンカップを経由して来日するケースはあったが、欧州の調教馬がこの臨戦過程で来日するのは初めてのこと。近年、オーストラリア調教馬がメルボルンからの直行便がない日本行きをためらう中、この3頭の意欲には勝負気配の高さがうかがえる。

 3頭の中で唯一のGI馬ジャッカルベリーは、もともとはイタリアの調教馬で、2010年のGIミラノ大賞(イタリア・芝2400m)を制している。イタリアでの実績がある馬は、意外にジャパンカップでの相性がよく、1995年の優勝馬ランド、2002年の勝ち馬ファルブラヴなどが、これに該当する。春には、GIドバイシーマクラシック(UAE・芝2410m)で、シリュスデゼーグル(フランス/せん6歳)、セントニコラスアビー(アイルランド/牡5歳)といった、ワールドサーキットで活躍する強豪馬に次ぐ3着と好走。前走のメルボルンカップも後方から鋭く伸びて3着と、調子は上向きだ。

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