【競馬】実現できたオルフェvs世界最強馬。海外遠征に求められる新たな選択 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

 実は凱旋門賞のレース直後、地元フランスや英国の記者から、「オルフェーヴルはすぐに帰国せずに、チャンピオンステークスに向かうという選択肢はないのか?」という声が上がっていた。また、騎乗したスミヨン騎手も地元メディアに対して「叶うならチャンピオンステークスでフランケルに挑むか、ジャパンカップに向かってほしい」とコメントを残している。

 チャンピオンステークスで稀代の怪物フランケルを破れば、凱旋門賞の敗戦を帳消しにしてもなお、お釣りがくるほどの快挙となる。今や「まともに走れば」日本国内には敵なしのオルフェーヴルにとって、ジャパンカップや有馬記念を勝っても、国際的な評価を高めるという点ではあまり意味を持たない。もちろん、これらのレースを勝つことは決して簡単なことではなく、賞賛に値するものなのだが、もはやオルフェーヴルがこのレベルに収まるスケールの競走馬ではないことは、まさに凱旋門賞の内容が示している。

 海外遠征のノウハウも積み重ねられ、次々と結果も出すことで、多くの日本調教馬が、海外のビッグレースへの登録や出走に積極的になった。ただ、昨年ドバイワールドカップを制して香港に転戦(到着後に回避)したヴィクトワールピサを除けば、目標のレースを終えると、条件的に適したレースが遠征先などにあっても、すぐに帰国してしまうのが実情だ。

 一方で、ヨーロッパなどでは、一線級の馬であっても適条件があれば、ヨーロッパ域内だけでなくアメリカやアジアなどを転戦していく馬も少なくない。例えば、昨年、鳴り物入りでオーストラリアからアイルランドに移籍し、秋シーズンは凱旋門賞(10月2日)から英国チャンピオンステークス(10月15日)、そしてブリーダーズカップ(11月5日)と連戦したソーユーシンク(牡6歳/今年7月に引退。GI10勝)もその1頭だ。
 
 無論、出走するために障害も当然存在するが、それはいずれも些細なものだ。

 例えば、今回のオルフェーヴルの場合、金銭的な面で言えば、凱旋門賞終了時点でチャンピオンステークスへの登録はしていなかったから、7万5000ポンド(約940万円)の追加登録料を支払う必要があった。加えて、フランスから英国への輸送費や、延長した分の滞在経費も発生する。しかし凱旋門賞2着の賞金は、約91万4000ユーロ(約9200万円)。十分にペイできたはずだ。

 フランスから英国アスコットへの輸送に関しても、馬運車で8~10時間。栗東トレセンから東京や中山競馬場への輸送を経験しているオルフェーヴルなら、これは未知の領域というほどではない。馬専用の輸送機を利用するという手もある。島国であるアイルランドの厩舎関係者によれば、「飛行機での輸送は馬運車より負担が少ない」とのことだ。

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