【競馬】岩田康誠「秋華賞に挑むジェンティルドンナは、ブエナ級の器」 (2ページ目)

  • 新山藍朗●取材・構成 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

――意外にも、岩田騎手にとって、スプリンターズSは今回が初制覇です。

「チャンスにめぐりあわなかったというのもありますが、ぶっちゃけ、自分は1200mのレースが不得意やったんです。自分のちょっとしたミスが、最後のハナ差とかアタマ差とかの負けにつながるというのは、レースとしての難しさがありますし、(自分の)性格的にも合いませんでした(笑)。ただ今年になって、1200mや1400mの短いレースにも、自信を持って対応できるようになってきましたね。(2006年に地方競馬の兵庫県競馬から)JRAに移籍して6年もかかりましたけど、それも小さな勝因のひとつかもしれません」

――ともあれ、このあとに続くGIシリーズのスタートとしては最高の結果でした。さて、次はいよいよ秋華賞です。岩田騎手が騎乗するジェンティルドンナに、史上4頭目の『牝馬三冠』がかかったレースです。前走のトライアル、ローズS(1着。9月16日/阪神・芝1800m)は強かったですね。

「(ジェンティルドンナが)秋華賞を勝つためには、ローズSが大事だと思っていましたから、その点では最高のレースができました」

――「最高」というのは、これまでずっと末脚勝負だった馬が、前でレースをして、それで結果を出せたからでしょうか。

「秋華賞は、京都の内回り2000mで先行有利。これまでのように後ろから行くレースをしていたら、取りこぼすことも考えられます。それを回避するためには、ローズSで前での競馬を試す必要がありました。レース前から『今度は、絶対に前で競馬したる』と思っていたし、それで結果を出せたのは、やはり"最高"ですよ」

――これまでとは違うスタイルで臨むことに、不安はありませんでしたか。

「もともと素直で賢い馬ですから、不安はなかったですね。それよりも、ジェンティルドンナは、後ろからでも前からでも『どんな競馬もできることを証明したい』という気持ちのほうが強かった」

――そして、狙いどおりの結果を出しました。

「ローズSでも(今までどおり)後ろから行って勝っていたら、もしかすると『今回は負けたけど、秋華賞ではわからないよ』と期待を抱く陣営があったかもしれない。でも、(最大のライバルと言われた)ヴィルシーナよりも前で競馬をして寄せつけなかった。1馬身半の着差が縮まるようにも見えなかった。あれで、他の陣営が『あの馬にあんな競馬をされて、次、どないして勝つねん』と思ってくれたらありがたい。そういう狙いもありました」

――対戦相手にどうしようもないという気分にさせる、いわゆる心理戦ですね。

「大きなところを勝つには、そういうことも必要です」

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