【競馬】オルフェーヴルでも涙。凱旋門賞制覇には何が必要なのか (3ページ目)

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

 スミヨンの手元がピクリとも動かず、インコースの英国二冠馬も、フランスダービー馬もまったく伸びない中、あっという間に先頭に立つ。しかし、闘争本能によって点いた火は、目の前に敵がいなくなれば小さくなるのが条理。また、渋った馬場は思いのほかオルフェーヴルのガソリンを消費した。その結果、したたかに省エネ走行でチャンスをうかがっていたオリビエ・ペリエの駆るソレミアに、ゴール前、図ったかのような差し返しを受けてしまうことになる。

 陣営が相手を過大評価してしまっていたのか、それともオルフェーヴルを過小評価してしまっていたのか。絡み合った伏線のどこに間違いがあったのかは確かめようがない。しかし、どの馬が一番強いパフォーマンスを見せたのかは一目瞭然だ。

「完全に勝たれたと思った。ところが、オルフェーヴルが先頭に出た途端に走るのをやめてしまっていたように見えたので、懸命に追い掛けた。こちらにとっては運がよかった」とペリエが語れば、「もっと強い馬がいれば結果は違った。運が悪かった」とスミヨンは肩を落とす。ともに凱旋門賞の栄光を複数に渡って手にしている名手。その両者から「運」という言葉が漏れた。

 はたして、世界を獲る最終局面を分けるのは運なのだろうか? 冒頭のイギリス人調教師が答える。
「確かに勝負は運が左右することも多い。しかし、幸運はそうそう転がってくるものではない。そう、勝つことができるのは、勝つ力を正しく導いたときだ。そのためには、挑戦を続けなくてはならない。日本の馬はもう順番の列に並んでいるのだから」

 その日は、決して遠くはないはずである。

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