【競馬】大外枠も不問。揺るがぬオルフェーヴル陣営に見た、凱旋門賞制覇の現実味

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

前哨戦のフォワ賞を制したオルフェーヴル。10月7日、いよいよ凱旋門賞に挑む。前哨戦のフォワ賞を制したオルフェーヴル。10月7日、いよいよ凱旋門賞に挑む。「Soumillon l'orfevre(金細工師スミヨン)」

 フランス最大の競馬専門紙『Paris Turf』紙の10月4日版の一面トップには、その前日に行なわれた、スミヨン騎手の跨(またが)るオルフェーヴル(牡4歳)の最終追い切りの写真が、冒頭の見出しとともに載せられていた。オルフェーヴルの名前の意味である金細工師と、スミヨン騎手がもたらすであろう栄誉を引っ掛けたものだ。

 日本のチャンピオンとして海外遠征初戦のフォワ賞(1着)で、見事1番人気に応え、欧州の馬場適正と実力の高さを同時に示す結果を出したオルフェーヴル。間違いなく、日本だけでなく世界中からも、今年の凱旋門賞(10月7日/フランス・ロンシャン競馬場/芝2400m)の主役と目されている。

「オルフェーヴルはレースに出るのをやめたりしないよな?」

 旧知の香港人競馬記者がフェイスブックを通して心配そうに尋ねてきた。香港では香港ジョッキークラブで凱旋門賞の馬券が発売されることもあって、当地の競馬メディアにとっても当然関心事のひとつである。

 この1週間は、出走予定馬の動向によって世界中が日を追うごとに落胆の声を漏らす日々が続いていた。昨年のエリザベス女王杯(日本)から、ジャンロマネ賞(フランス)、愛チャンピオンS(アイルランド)とGI3連勝中のスノーフェアリー(牝5歳/イギリス)が脚部不安によって回避したのを皮切りに、ブックメーカーのオッズでもオルフェーヴルと並んで1番人気になっていた昨年の凱旋門賞覇者デインドリーム(牝4歳/ドイツ)が自国ドイツで見つかった馬の疫病の影響で出走を断念。さらに、今年のエクリプスS(英国GI)の勝ち馬ナサニエル(牡4歳/イギリス)も熱発を理由にキャンセルと、ほんの少し前は「空前の好メンバー」による一戦と称されていたのが、有力馬の相次ぐ戦線離脱によって一気にトーンダウン。それを受けての香港人記者の質問だったのだ。

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