【競馬】スプリンターズS、女王・カレンチャンに立ちはだかる「壁」 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Nikkan sports

 1990年にスプリンターズSが、そして1996年に高松宮記念(当時の名称は高松宮杯)がGIに昇格となったこともあって、日本における短距離GIの歴史はそれほど古くない。それでも、これまでにこのカテゴリーのGI2勝馬は、カレンチャンを含めて7頭。年間に2レースしかないことを考えれば、むしろ多いぐらいだ。

 これまでに3勝目に挑戦したのは、2勝馬の7頭のうち、フラワーパーク、トロットスター、ビリーヴ、ローレルゲレイロの4頭。いずれも、その3勝目を狙ったレースで、GI初勝利の馬に敗れているという共通点がある。

 名脇役として、長く活躍する馬は多いが、長くトップで居続けるスプリンターは日本ではあまり見当たらない。そのスピード感と同じく、世代交代が早いのも特徴だ。3勝馬がいないのは、こうした短距離路線の消長の激しさにも表れているとも言えるだろう。

 そういった意味では、今年はカレンチャンと海外遠征馬を除く全馬がGI未勝利で、下克上の条件を満たしている。ライバルという壁が歴史に裏づけられて、さらに大きな存在となっているということだ。

 一番の難敵と目されるのは、同じ安田隆行厩舎のロードカナロア(牡4歳)だ。厩舎の方針で使い分けられたこともあって、これまでにカレンチャンとの直接対決は、高松宮記念(3着)とセントウルS(2着)の2戦のみで、1勝1敗と五分の成績。セントウルSではエピセアロームの強襲を受けて2着に敗れたが、カレンチャンを徹底マークし、ゴール直前で競り落とした内容は負けてなお強しのもの。高松宮記念当時よりも、明らかに力をつけていることがうかがえる。安田厩舎が送り出すもう一頭、ダッシャーゴーゴー(牡5歳)ともども栄冠を譲り合う気は毛頭なく、同門同士の真っ向勝負が期待できる。

 話題にあがっているセントウルSで台頭した、3歳牝馬のエピセアロームも強力なライバルと言える。桜花賞前までは今年の二冠牝馬ジェンティルドンナと同等の評価を受けていた逸材で、クラシックこそ結果は出なかったものの、距離短縮によって素質を開花させつつある。父は成長力のあるダイワメジャー、母父は短距離のビッグレースに強いコジーンという血統背景に加え、「いかにもサンデー系らしい切れ味は武(豊)騎手にピッタリ」(競馬専門紙記者)という声もある。海外から参戦するラッキーナインのファウンズ調教師も「カレンチャンと同じくらい怖い」とマークしているほどだ。

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