【競馬】宝塚記念も暗雲!? オルフェーヴルが背負った「十字架」

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

 結局、主戦の池添謙一騎手が、以前行なったインタビューで語っているように、オルフェーヴルはもともと「気性面に難しさのある馬」なのだ。阪神大賞典の"迷走"ぶりや、天皇賞(春)のみじめな負け方は、まさにその気性面の「難しさ」が顔をのぞかせたことを示している。つまり、前2戦の敗因はその大半が精神面にあり、それがどのように改善されたかは外見からは判断しにくい。ゆえに、出否の判断がここまで延びたのだろう。

 では、オルフェーヴルのその精神面は、この間の調教で本当に改善されたのか?

 その点で、美浦のある競馬関係者から、気になる話を聞いた。オルフェーヴルは"禁断の木の実"を食べてしまった、というのだ。

「"禁断の木の実"というのは、阪神大賞典の向う正面で先頭に立ったこと。オルフェーヴルはもともと行きたがる馬なんだけど、その気持ちを、負けを覚悟で抑え込んで、終(しま)いの脚につなげようとして強くなった。言い換えれば、オルフェーヴルをオルフェーヴルの好きなように走らせなかったことで、結果を出してきた。なのに、阪神大賞典ではオルフェーヴルの好きなように走らせてしまった。あれで、オルフェーヴルが『これでもいいんだ』と思ったとしたらどうなるか......。次の春天でガッチリ抑え込まれたら、反抗したくもなる。そういう気持ちがまだ残っていたら、今度の宝塚記念でも同じことが起こらないとは限らない。だから、あれは"禁断の木の実"だったわけです」

 競馬では、GI級の能力があって将来を嘱望された馬が、何かの原因で突然走らなくなる、ということはよくある話。そういうとき、敗因を聞かれた関係者が決まって口にするのは、「走る気が戻ってこない」という言葉だ。

 オルフェーヴルが今、そのような状況にあるかどうかはわからないが、阪神大賞典の逸走に、天皇賞(春)のあの惨敗ぶりを重ねると、そうなるかならないかの岐路にいるのではないか、と想像することはできる。

 もちろん現実的には、宝塚記念は天皇賞(春)より距離が短くなるうえ、阪神大賞典後に課された調教再審査も今回の調教過程ではなかった。いずれも、オルフェーヴルにとってはプラス材料で、その分はファン投票第1位の期待に応えられる可能性は高まったと言えるだろう。

 ともあれ、宝塚記念はオルフェーヴルにとって、2度の敗戦後の「3度目の正直」となるのか、あるいは「2度あることは3度ある」のか、注目される。

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