【競馬】ワールドエース、皐月賞2着もダービーで勝つための布石だった!? (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • 村田利之●写真 photo by Murata Toshiyuki

 2戦目の若駒Sは極悪馬場で2着に敗れ、批判の声があがった。しかしそれは、「馬に折り合いを教えたかった。マイルの馬にしたくなかった」という福永騎手の先を見据えた思惑もあったからで、その意味では覚悟の敗戦。3戦目のきさらぎ賞で小牧太騎手が騎乗して勝ったとき、小牧騎手は「前のレースで教えたことが生きた」と語っていることからしても、決して無駄な敗戦ではなかった。というより、ワールドエースの、ダービーへの挑戦は、あの敗れた2戦目から本格的に始まったといえるかもしれない。

 続く4戦目は皐月賞前の一戦で、オープン特別の若葉Sに出走した。このときも、前走でGⅢを制覇し「すでに皐月賞出走の権利はあるのに、なぜ今さらオープン特別を使うのか」と疑問視された。だが、先の競馬専門紙記者によれば、ここにも、ダービーに目標を据えた、陣営のある思惑があったのだと言う。

「勝った2戦は、デビュー戦も、きさらぎ賞も、外回りのコーナーがふたつの競馬。そこで陣営は、大一番を前に、その舞台と同じコーナー4つの競馬を経験させたいと思ったわけです。ただし、その経験は当時報道されたような、直近の皐月賞を想定してのことではなかった。ダービーも、東京コースのコーナー4つの競馬。陣営は、ダービーのために、コーナー4つの若葉Sを走らせたのです」(専門紙記者)

 かくして、準備は整った。2着に負けた皐月賞にしても、これをダービーへのひとつのステップと見れば、外を回って、いかにも脚を余した印象。むしろ、上々の結果と言える。

 状態面にも不安はないようで、ダービー1週前追い切りでの福永騎手の感想は「雰囲気がいい」ということだった。

 これは、専門紙記者によれば、「ダービーは、みんなが目標にするレースだから、その前ともなれば、稽古は一段ときつくなる。そこで、耐え切れなくなったり、やたらテンションが上がる馬が増えたりするわけですが、そんな中で『雰囲気がいい』というのは、最高の褒め言葉です」という。

 ダービー馬には、ダービー馬に相応しいスケールも、華も、必要と言われるが、ワールドエースはそのどちらも兼ね備えている。大種牡馬への階段を着々と駆け上がりつつあるディープインパクト、その産駒で「最初のダービー馬」の栄誉を手にするのは、この馬だろうか。

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