【競馬】ワールドエース、皐月賞2着もダービーで勝つための布石だった!? (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • 村田利之●写真 photo by Murata Toshiyuki

 皐月賞は、スタート直後に躓(つまず)いて、あわや落馬かというほどの不利があった。そのため、道中は最後方待機を強いられ、直線でも距離ロスの多い大外を回らざるを得なかった。それほど流れの向かないレースだったにもかかわらず、しっかりと2着を確保するあたりは能力の高さ。勝ったゴールドシップとの2馬身半差は、一見、決定的とも思えるが、流れが向いた分と向かなかった分のプラスマイナスを差し引きすれば「逆転可能」という計算も成り立つ。

 加えて、もともとダービーは、皐月賞で脚を余した「2、3着馬が勝つ」と言われるレース。実際、スペシャルウィークやジャングルポケット、最近ではエイシンフラッシュが、その格言通りに勝っている。皐月賞でのさまざまな不利を思えば、今年の出走メンバーで最もそのイメージに合うのは、この馬だろう。

 関西の競馬専門紙記者によれば、ワールドエースは、父のディープと同じく、デビュー前の稽古の段階から別格の動きを見せ、早くも「大物」との評判が立っていた。

「もちろん陣営も自信満々で、デビュー戦の前には厩舎スタッフが『問題は勝つかどうかではなく、どう勝つかだ』と話していたくらいです」(専門紙記者)

 昨年暮、阪神のデビュー戦は、単勝1倍台の断然人気に支持され、期待通りに勝った。2着馬との着差はコンマ1秒で、父ディープのデビュー戦(コンマ7秒差)ほど差はつかなかったものの、最後まで余裕たっぷりの走りで、着差以上の強さを感じさせた。そしてこのとき、誰よりもその走りに手応えを感じたのは、おそらく鞍上の福永祐一騎手だっただろう。

 ある競馬関係者によれば、デビュー戦のレース直後、早くも福永騎手は「ダービーはこれで行くわ」と宣言したというのだ。

「このとき、すでに彼はヒストリカルなどの有力馬に乗っていたし、この先もまだ、有力馬(の騎乗)を頼まれる可能性はあった。もしかするとその中には、ワールドエース以上の馬がいたかもしれない。なのに、早々に『ダービーはこれで......』と言ったのは、それだけこの馬に、かなりの手応えを感じたということです」(競馬関係者)

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