【競馬】皐月賞、ディープ産駒は苦手な、あの『壁』を越えられるか? (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

 もちろん現3歳世代では、アダムスピークが2000mのラジオNIKKEI杯を勝っているし、ワールドエースも重賞ではないものの、2000mの若葉Sを圧勝した。ゆえに、距離不安など、ただのアラ探しという見方もできるかもしれない。

 とはいえ、GⅡ・GⅢやオープン特別と、GIではやはり違う。GIという、いわば能力の最後の一滴まで絞り切るような大舞台では、ひょっとしたら少し乏しい距離適性が、最後の"底力"に影響をおよぼしている可能性もありうるのだ。

 事実、ワールドエースの主戦・福永祐一騎手もかつてのインタビューで、「2000mを越える距離でどんな結果を出せるかが、ワールドエースを含めたディープ産駒にとっての、ひとつの試金石になる」と話していた。少なくとも、その点について、少しも楽観視していなかったと、記憶している。

 ある競馬関係者によれば、そこにはこんな背景もあるという。
「ディープ産駒は良血の期待馬が多いから、必然的に値段が高い。それはそれだけ、早期に結果を求められる馬が多いということ。そのため、早く仕上げて、早くデビューして、早く勝たせようとする。だから、結果的にスピードが優先され、その分、距離に限界のある馬が増える。人気種牡馬の産駒ゆえの宿命のようなものです」

 また、関西の専門紙トラックマンは、1番人気と目されるワールドエースへの不安を漏らす。
「あの馬はもともと気が良過ぎるスピードタイプ。黙って走らせたら、引っかかって距離が持たない。そこで、なんとかあの非凡なスピードを制御しようとして考えられたのが、最後方で脚をため、直線で一気に爆発させるというあの戦法。それが、きさらぎ賞と若葉Sではうまくいきましたが、馬自身がまだ完成途上で、危なっかしさは残ったまま。だから皐月賞でも、その前2走のようにうまくいくとは限りません。勝って不思議はないけど、凡走してもうなずける。そのふたつの結果が背中合わせという感じがします」

 このトラックマンは続けて、こう語った。
「それなら、レースの安定性を買って、スプリングSの勝ち馬であるグランデッツァと、共同通信杯を制して5戦5連対のゴールドシップのほうが、軸としての信頼は置ける」
 
 グランデッツァもゴールドシップも強い馬だ。しかもどちらも前走で2着に退けたのは、2歳時に「最強ディープ産駒」と言われたディープブリランテ。それだけ、前記2頭の壁は厚い。

 それでも、ワールドエースなど5頭のディープ産駒たちは、距離2000mの壁を打ち破り、さらにはライバル2頭の壁も越えてみせるのか。答えは、もうすぐ出る――。

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