三ヶ島かな、ツアー初優勝の舞台裏「神様はまた勝たせてくれないのか......心底思った」

  • 古屋雅章●取材・文 text by Furuya Masaaki
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

――しかし、それほど困難な状況にありながら、ボギーで切り抜けました。

「そうなんです。私もボギー以上を覚悟していましたけど、とりあえず"振った"という感じで打ったら(ボールがバンカーから)出てくれて。結果、ボギーだったので拍手は少なかったんですけど、ギャラリーの方からも『ナイスボギー』と声をかけてもらって、キャディーの佐々木さんとも2人で『ナイスボギーだった』と言い合って、(前向きに)16番ホールへと向かうことができました。

 実は15番のティーグラウンドに行く前、いったん落ちつこうと思って茶店のトイレに行ったんですけど、その時に手が震えていて。そこで、『まだまだやれる!』って気持ちを奮い立たせたんです。だから、15番ではボギーを叩いてしまったけれど、16番のティーグラウンドに向かう時には『やると決めたんだから、自分でやり通せよ!』ってもう一度、自分に喝を入れました。

 それで、16番(パー3)ホールは右にピンがきってあったので、本来であればピンの左に打ちたかったんですけど、『ここは攻めていかないといけない』『逃げちゃダメ』と決意して(ティーショットを)打ちました。でも、グリーン右手前に少し外れてしまって」

――ピンまで12ヤードのアプローチでした。

「日頃からショートゲームには多くの練習時間を費やしてきたので、『いつもやっている距離だな』と。『これは、いつもどおり打てば"入る"』って思っていました。実際、それが入って、それまでずっと悪い流れが続いていたので、やっとその流れから『脱出できた!』と思って、思わずガッツボーズが出ました」

―16番、17番のバーディーは攻めた結果ですね。

「そうです。私の執念(笑)。16番、17番とご褒美がきたので、『頑張ってよかった』って思いました」

――ウイニングパットを打つ時の心境はいかがでしたか。

「3打目のアプローチが寄ったあと、『えっ、これ決めないとダサくない?』っていう気持ちに変わっていて(笑)。絶対に入れなきゃ、と思っていました」

――それをきっちり決めて、優勝を決めた瞬間の気持ちはどうでしたか。

「キャディーの佐々木さんから『おめでとう』って言われたんですけど、まだ(試合が)終わった感じがしなくて。なんでかわからないけれど、自分のなかでは『まだ次のホールがある』『まだ終わっていない』って感覚でした。

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