「賞金女王は仕方ない」一度は諦めた稲見萌寧。コーチが語った快進撃の要因とは? (2ページ目)

  • 柳川悠二●取材・文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Getty Images

 ふたりが同組で回った初日は、大会レコードタイの8アンダー、単独首位でスタートした古江に対し、稲見は2オーバーの25位タイと出遅れた。稲見は10月に発症した腰痛(ヘルニア)の影響なのか、ショットが安定せず、本調子からはほど遠かった。

 賞金女王を争う緊張感はなかった。ひたすら自分のゴルフと、腰の状態と向き合いながらラウンドしていた。

「ぶっちゃけて言うと、(10月の)NOBUTA GROUP マスターズGCレディースで(腰痛により最終日の)棄権を決めた時は、賞金女王は仕方ないと、諦めた。その時は原因がわからなかったし、歩けないぐらい痛かったですから」

 翌週の樋口久子 三菱電機レディスも欠場せざるを得なかったが、復帰したTOTOジャパンクラシックで2位という好成績を収め、さらに続く伊藤園レディスで優勝した。

「TOTOの時はゴルフの調子はよかったんですけど、最終日が近づくにつれ、『その日、ラウンドできるかな』という不安のほうが大きかった。スイングとか、ゴルフに悩む時間がなかったことが幸いしたのかな。伊藤園レディスは腰の状態も少しずつよくなって、うまく噛み合ったことで勝てたのかなと思います」

 リコーカップでは初日こそ出遅れたものの、稲見は3日目を終えて通算1アンダー、15位タイにまで盛り返した。

 一方の古江は、2日目、3日目とスコアを伸ばすことができず、首位の三ヶ島かなに3打差の通算6アンダー、単独2位で最終日を迎えた。稲見としては、古江のスコアをリーダーズボードで気にしながら回る最終日となった。

「途中までは意識していなかったんですけど、一昨日に単独14位以下だと、(古江が)単独2位でもひっくり返ることを知って、今日の後半はずっと(それぞれの順位を)気にしていました。本当にしんどい一日でした。

 出入りが激しく、ショットが酷かった。パターももったいないのがたくさんあって......。でも、後半はなんとか耐えることができた。

 自分のミスに対して(キャディーを務める)コーチに相談して、どうしてこうなったのか、どうするのが正解だったのか、と話し合った。落ち込んだりすると、その後のプレーに支障が出る。(最後は)必死に堪えて、切り替えられたことがよかったのかなと思います」

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