【木村和久連載】東京五輪を見て、オリンピックにおけるゴルフの将来を考えてみた (4ページ目)

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 そもそもコース設計の発想が日本と欧米とでは違うのです。

 1950年代のアメリカ。ロバート・トレント・ジョーンズ・シニアが、池をたくさん配置して、ロングホールでは池を越えれば2オンのご褒美がもらえるようなコースを設計しました。

 そうしたコースで話題を振りまいたのが、アメリカゴルフ界のスーパースター、アーノルド・パーマー。パーマーは池越えの2オンにも果敢にトライし、チャレンジスピリットの権化として、ジャック・ニクラウスよりも人気を博しました。トーナメントのテレビ中継もちょうどその頃から始まって、トッププロがエキサイティングな戦いを披露し、ゴルフは爆発的な人気を得るようになったのです。

 一方、日本ではハザードの概念がちょっと違っていました。誰が見てもわかる、視覚的な恐怖心を感じさせるものがアメリカ。それに対して、日本は"わかる人にはわかる"、あるいは"気づかせる罠"といったもの。何も知らずに通り過ぎれば、それはそれで結構。けど、実はマウンドの奥には池があるよ、とかね。

 日本の代表的な林間コースは、日本庭園がモチーフになっていることが多いです。日本庭園は"見立て"や"気づき"の世界ですから、単なる石ころを並べた庭と見るか、宇宙の心理を追求した庭と見るか、本人次第なのです。

 結局、林間コースは大きなバンカーと樹木がハザードですから、今回の東京五輪でもテレビ的にはわかりにくいものでした。しかも、池があってもさほど効いていないし、バカでかいグリーンの傾斜も中途半端。本当なら、テレビ中継的にはグリーンを捉えたとしても、バックスピンで池に入るくらいのサディスティックなセッティングが必要だったのです。

 馬術競技では、だるまを置いた障害があったりして、馬がだるまの目を見て怖がったのか、脚がすくんで終わり......みたいなことがありました。「え~、そんなのありなの?」って感じでしたが、それはそれで新鮮でした。

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