【木村和久連載】松山英樹のマスターズ優勝はゴルフ業界をどう変えた

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

(1)アマチュアの楽しみがひとつ消えた
 アマチュアゴルファーの楽しみは2つあります。

 ひとつは、自らプレーしてスコアアップを目指したり、レジャーとして嗜んで健康維持を図ったりすることです。

 そしてもうひとつは、見るスポーツとしての楽しみです。これが、松山選手の優勝で日本人選手が初めててっぺんを極めてしまった。だから、ゴルフファンとしては最高のものを見せられて、ある意味、もうこれ以上、望むものがないのです。

 個人的には「やったぁ~!」と思った瞬間、一抹の淋しさも漂いました。だって、あとは何を楽しみにゴルフ中継を見ればいいのか?

 そんなですから、このタイミングでゴルフはちょっと置いておいて、エンゼルスの大谷翔平選手の二刀流の行方を見るほうに、シフトチェンジした人も結構いるのではないでしょうか。

 そういうわけで、アマチュアゴルファーの夢は、自分自身のことに舵が切られました。シングルを目指すでもいいし、海外でゴルフをするでもいい。年間50ラウンドを目指す、というのもありでしょう。

 さまざまなスタイルで、自分のゴルフを極めること、楽しむこと――そういった点に、重きが置かれていくような気がします。

 そうした状況にあって、人々の意識はどう変わるのか。おそらく、こうです。

(2)スポーツからよりレジャー化へ
 現在、ゴルフ場は大入り状態が続いています。その余波は、ゴルフ場以外のところにも波及しています。

 ゴルフのクラブショップやシャフト屋さんなど、注文が多くて受注をこなせていないところもあるとか。コロナ禍で海外からの材料や製品が入ってこないため、商品作りが追いつかないそうです。

 どこのゴルフ場に行っても、大入り満員。売れているゴルフ雑誌は"松山効果"もあって、広告は倍増。「徹夜して雑誌を作った」などと、うれしい悲鳴を上げているところもあります。

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