30cmのパットが入らない...。大里桃子がイップスの不安を抱えながら戴冠 (2ページ目)

  • 柳川悠二●取材・文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Getty Images

「悪いパットじゃなかったんですけど、『あれ!?』となっちゃって。気持ちの悪いままシーズンが終わり、次の年の(開幕戦である)ダイキンオーキッドレディスのプロアマで、1mのパットを(アマチュアの)みなさんが外すなか、私も外してしまって......それが、本格的な始まりです」

 以降、普通なら外すことなど考えられないショートパットを簡単に外してしまう、いわゆるイップスに陥った。

 翌2019シーズンは、シード権確保へ苦しい戦いが続いた。シーズン序盤は6戦連続予選落ちという屈辱も味わった。以降、パッティングに苦しむ大里を横目に、親友の渋野日向子ら同じ1998年度生まれの黄金世代の仲間たち、さらには年下の選手たちも次々にブレイクしていった。

「私たち(黄金世代)よりも、とにかく年下の子たちの勢いがすごい。彼女たちはショットメーカーで、『どうしたら、こんなに曲がらないんだろう』と思って見ていました」

 コロナ禍で2年におよぶ2020-2021シーズンも、苦しい状況に大きな変化はなかった。24試合に出場し、予選落ちは9回もある。年明けも2大会連続で最終日を迎えることができなかった。

「オフシーズンに、これまで自己流でやっていたスイングを改造しようと、いろいろな方に相談するようになった。私の身長(171cm)ならもっと飛ぶはずなのに、インパクトで詰まるような感覚があって。その点に関して、いいスイングを教えてもらいました。

(2019年に比べれば)賞金ランキング的には余裕はありましたが、今年序盤の予選落ちもあって、だんだんとランキングが落ちていた。早く解決策を、と考えているなかで、改善ができた」

 解決策の最たるものは、やはりパターだ。順手、逆手、クローの三種の握りを局面によって使い分け、不安を抱えながらも乗り切っていく。そして、1カ月前のヤマハレディースオープン葛城で、パターのシャフトを33インチから36インチに長くした。

「パターを長くしたことで、(技術的に変化したというより)気持ちがリセットできた。あんまり深く考えないことにしました。

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