渋野日向子のスイング改造は成功するのか。研究の第一人者に聞いた (3ページ目)

  • 吉田洋一郎●取材・文 text by Yoshida Hiroichiro
  • photo by Getty Images

 この改造によって、「飛距離が落ちた」などといった声も聞かれるのだが、科学的に見てどうなのだろうか。

 マッケンジー教授の見解では、「どちらのスイングも、パッシブトルクを適切に発生させ、ボールを安定して打つことができる」という。しかし、2019年のスイングのほうが、より高いクラブヘッドスピードが得られる可能性があるらしい。

「2019年のスイングはクラブの動力学(力とトルク)の観点から2つの利点があります。2019年のスイングでは、トップの位置が高く、肩の可動域が広いことがわかります。肩を大きく動かすことで、クラブの運動量が増え、ダウンスイングではタメが深くなり、クラブを加速することができます。

 また、高いトップからクラブを振り下ろせば、手の軌道(ハンドパス)の距離が伸び、クラブを直線的に動かすことができます。こうしたクラブの運動量やハンドパスの長さによって、クラブのヘッドスピードが上がります」

 現在のスイングは、コンパクトなレイドオフのトップを採用し、シャローなダウンスイングを行なって、クラブをコントロールする意図があると思われるが、それはスイング中のヘッドスピードを落とすことにつながると、マッケンジー教授は指摘する。

「多くのゴルファーにとって、トレイルショルダー(右肩)での動きを制限し、トレイルエルボー(右ひじ)が体から離れないようにすることで、一体感が生まれ、体の動きでクラブをコントロールしている感覚が出ます。ただし、フラットな腕の動きは、両肩によって生み出される力の伝達を制限し、ヘッドスピードは低下します」

 2019年の渋野のスイングは、よくダスティン・ジョンソンに似ていると言われたが、マッケンジー教授によると、現在のスイングはマット・クーチャーやジェイソン・ダフナーに似ているという。彼らのようなバックスイングでトップの位置を低く抑える1プレーンスイングは、体の回転と手や腕の動きが同期しやすいため、再現性が高く、ボールをコントロールすることに長けている。

 一方で、トップの位置が低く小さくなるため、飛距離を出すことには向いてはいない。飛距離よりも、正確性で勝負するタイプのスイングモデルと言えるだろう。

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