マスターズ取材40年以上の記者は松山英樹のグリーンジャケット姿に何を思う (3ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 松山にも苦しい場面はいくつもあった。それでも、「試合は終わったわけではない。まだまだ攻める気持ち、強い気持ち(を持って)、自分を信じて、その一打を打とう」という揺るぎない闘争心と自信を、最後まで失うことがなかったのだと思う。

 最終日。18番ホールの第1打を打った時に「勝てる」と思ったという。そうして、「1番のティーグラウンドに立つまでは、別に緊張感ってなかったんですが、立った途端に緊張しました。それからずっと、18ホール、緊張の連続でした」と松山は言うけれど、外側から見れば、堂々とした態度、いつもと変わらない姿勢のゴルフに見えた。それこそ、誰よりも練習し、鍛錬してきた自信の表われだったと思う。

「才能は有限。努力は無限」というのは、松山が少年時代の座右の銘だ。

 帰路について、すでに空港まで行っていたケビン・ナは、松山の優勝が決まるかもしれないとなると、わざわざコースに戻ってきて祝福した。

 松山もあふれる涙を堪え切れずに泣いた。日本中のゴルフファンも感涙した。

 10年前のマスターズ最終日、ホールアウトした直後に、松山はこう語っていた。

「鳥肌が立ちましたよ。18番ホールのグリーン上に上がってきた時......『あっ、このパットを沈めないとやばいな』と思いました。

(鳥肌が立った)もう1回は、表彰式。拍手が多すぎてびっくりしました。緊張しました。プレーよりも全然緊張しましたね。

(ローアマのシルバーカップは)重量は軽かったけど、重みはありました(笑)。自分で何人目かわからないけど、その1人になれたことがうれしいです。(石川)遼より先に、表彰式にも出られましたしね。スコアは負けたけど(苦笑)。

 グリーンジャケットを見ていて、『いいな』って思いました。(自分も)着てみたいなって感じです。まあ、それまでは日本のどっかで緑のニセモノのジャケットを探してきて着てようかな(笑)」

 その感動を忘れずに、松山は10年もの間、精進し続けた。

 今、ホンモノのグリーンジャケットを纏う松山英樹の勇姿は、神々しさすら感じる。

 おめでとう!

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