マスターズ取材40年以上の記者は松山英樹のグリーンジャケット姿に何を思う

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 その昔、ジャンボ尾崎が似たようなことを言っていた。

「つらいとか、努力とかって、そんなことは思ったことがない。だって、自分には目標があり、夢がある。それに向かって一生懸命やっていくことを、努力と言うならばそうかもしれないけれど、それが苦労とかと思ったことはない。

 だって、夢をつかみたいからやっていることなんだから。夢がなく、それでも必死にやらなければいけない時こそ、努力と言うんだと思う。それに、夢をつかんだ時には、そんなことは全部笑って話せるしね」

 おそらく今の松山の心境も、同じようなものかもしれない。

"チーム松山"は目澤秀憲コーチが入ったことで、その歯車にベストな潤滑油となってチームは加速した。

「今まで、自分でいろいろ考えて、自分で悩み、はたしていい方向に向かっているのか、そうでないのかって、迷うことがあったけれども、(コーチがいることで)今は『あぁ~正しかったんだ。そうなんだ』と思えて、迷うことも、悩むこともなくなりました。『これでいいんだ』と」

 松山は、彼の性格的なこともあって、これまですべてを自分の中に詰め込んで練習し、模索し、悩み、苦悩を続けていた。弱音を吐かないというのは、ともすると、一度も吐き出すことなく、自分の中にしまい込み、パンパンになっても我慢する、という状態だったと思う。

 コーチがつくことで、そんなストレスや悩みを、外にどんどん吐き出すことができた。それによって、精神的にも身軽になったのだと思う。

「マスターズ前週の試合で、初日うまくいっていたものが、2日目から悪くなり、怒りが爆発しました。その時に『オレは、何をやっているんだ』と思ったんです」

 マスターズで今まで以上に笑顔を見せたのは、そんな自分に対する反省でもあった。

 ゴルフは、メンタルなスポーツでもある。

 特にタイガー・ウッズが言うとおり、「マスターズでは、フィジカルテストを強いられるだけでなく、メンタルテストもかなり多く強いられる」という言葉に表われている。

 心にゆとりを保つことで、窮地に立たされても活路を見出して、次に的確なショットを放つことができる。

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