マスターズ制覇で汚名を返上。ダスティン・ジョンソン、パワーと小技の凄み (2ページ目)

  • 武川玲子●文 text by Takekawa Reiko
  • photo by Getty Images

 2016年の全米オープン覇者でもあるDJだが、これまでにメジャータイトルを何度も逃している。「メジャーで勝てない大器」と揶揄され、3日間54ホールを終えて首位に立ちながら、勝てなかったことも何度かある。

 その要因は"メンタル"と言われていた。

 最初にメジャーを逃したのは、2010年のペブルビーチで行なわれた全米オープンだった。首位でスタートした最終日に「82」と大きく崩れた。その後、2011年の全英オープンで惜しくも2位タイ。全米プロでは、2019年、2020年と2年連続2位に終わっている。

 記憶に新しいのは、今夏の全米プロ。サンフランシスコのTPCハーティングパークで行なわれた大会で、DJは首位で最終日に臨んだが、「64」の好スコアを叩き出したコリン・モリカワに逆転優勝を許した。その時も、「DJがまた(メジャーで)勝てなかった」という声が囁かれた。

 しかし、DJはそんな周囲の雑音に惑わされることなく、自身の気持ちが崩れることもなった。モデル、シンガーとして活動するセレブ、ポーリナ・グレツキーが"よきパートナー"として彼を支え、彼女との間に生まれた2人の息子の存在も励みになっていた。

 さらに、義理の父にあたるNHL(米アイスホッケーリーグ)のレジェンド、ウェイン・グレツキー氏の言葉が大きな支えになっていたという。

「メジャーは、勝てるとき、勝てないとき、というのがある。チャンスを作り続けていれば、必ず自分の順番が回ってくるものだ」

 その順番が今回、待望の夢舞台で回ってきた。

 振り返れば、新型コロナウイルス感染拡大によって、2019-2020シーズンはおよそ3カ月の中断を余儀なくされたが、ツアーが再開されるや、圧倒的な強さを見せたのがDJだった。

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