渋野日向子が「やっと落ちた」。コーチが語った予選落ち→優勝の裏側 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 渋野はパー。鈴木愛はボギー。19アンダーvs17アンダー。ふたりの差は、2打差に広がった。

 暴風雨が加速するなか、試合は最終18番へ。鈴木がバーディーパットを決めたが、渋野がパーで切り抜け、デッドヒートに終止符が打たれた。

 渋野を指導する青木翔コーチは、その熱戦をコース脇で見つめていた。そしてラウンド後、こう語った。

「結果的に先週、(伊藤園レディスで)予選落ちしたことがよかったのかなと思います。僕としては『やっと落ちた』と思いました。予選を通過して、ある程度、上位に居続けたら、反省し切れていないことが出てくる。それが予選を落ちたことで、自分を見直す機会ができた。

 それで、彼女には『ゴルフが中途半端になっているんじゃないか。攻めるしかできないのだから、もっと思い切っていけよ』と。もちろん、そういう言葉は使っていませんが、そういうふうに彼女が取ってくれればいいな、という話をしました」

 伊藤園レディスで(国内ツアーでは)実に26試合ぶりに予選落ちしたあと、渋野は地元・岡山に戻ったという。そこで、青木コーチだけでなく、両親ともコミュニケーションを交わしたそうだ。内容について問われると、「秘密です」と渋野は答えた。だが、久しぶりの予選落ちが、我に返る機会を与えてくれた。

 覚醒するきっかけになったことは、間違いない。

 ちなみに、大王製紙エリエールレディスは2位となり、4週連続優勝の快挙を逃した鈴木も、樋口久子 三菱電機レディスの前の週の大会(NOBUTA GROUP マスターズGCレディース)で予選落ちしていた。悪い結果を薬にしていた。

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