果敢にツーオン狙い。松山英樹の
勝負勘と圧倒的技術の結晶を見た

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Kyodo News

 一方、セミラフからの池越えとなる松山もまた、果敢にツーオンを狙う。8番アイアンを手にし、長い時間をかけてアドレスに入る。放たれたボールは高い弾道を描き、百戦錬磨の谷口を上回る、ピン右50センチの位置にピタッと止まる会心の一打となった。

 2打のリードがあれば、池を避けるようなコースマネジメントが頭をよぎっても当然だろう。しかし、優勝を争うゴルファーが先にチャンスにつけたと見るや、松山も初優勝が手からこぼれ落ちるリスクを恐れず、攻める姿勢を崩さなかった。勇気と勝負勘と、何より優勝をたぐりよせた魅せる技術。近い将来にプロへ転向し、世界へ羽ばたいていこうという松山の才能が覚醒した一打ともいえた。

 難なくイーグルパットを決めた松山にガッツポーズはなく、すぐにボールをカップから取り出し、大ギャラリーに帽子をとって一礼するだけだった。

「レイアップは考えず、ピンしか見ていませんでした。ティーショットとセカンドは、会心のショットでした。今回の優勝によって、階段を一段上ったというより、ジャンプした感じですよね(笑)。マスターズ優勝という夢に向かうためには、この優勝は通過点。将来は、調子がいい時も悪い時も、ファンを連れて歩けるようなプレーヤーになりたい」

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