【木村和久連載】プロを震え上がらせた設計。
鬼才ピート・ダイを偲ぶ

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 そして帰国後、早速これを取り入れました。それが、鶴舞カントリー倶楽部(千葉県)の、東の4番(パー3)ホールにあります。元メンバーとしては、ちょっと自慢です。

 井上誠一とピート・ダイは、ウォーターハザードについても、その見解は非常に対照的です。あくまでも個人的な見立てですけど、こんなふうに捉えています。

 井上誠一のウォーターハザードは、「風情」があり、機能的には「トラップ」です。とくに前期は、そういう作風が多いように思います。

 水際に風情を求めるあたりは、浮世絵的です。鶴舞CCも、池の周りには柳なんかが植えてあって、なかなか趣がよろしいですよ。

 機能面で言うと、微妙です。鶴舞CCの西18番(パー5)なんか、フェアウェーの左右に池があるのに、その前にマウンドがあって、説明がなければ、池があるのかわからないですから。そんな、見えない池を作ってどうするの?って感じです。

 晩年に設計した浜野ゴルフクラブ(千葉県)あたりで、ようやく欧米型の、視覚に訴えるウォーターハザードを拵(こしら)えていましたけどね。

 一方、ピート・ダイは、最初から視覚で、直接危険を訴えるウォーターハザードです。誰が見ても、「これはヤバいんじゃないか」と、打つ前からプレッシャーを与えてくるわけです。

 さて、ピート・ダイが、17歳年上の井上誠一を知っていて、わりと好きだったというのは、微笑ましい話です。今頃、天国でふたりが、ウォーターハザード談義なんかしているかもしれませんね。

 鬼才ピート・ダイに合掌。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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