渋野日向子と大谷翔平との共通点。
メンタルトレーナー「自然体を強く感じる」

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 渋野さんも、同じように自然体のにおいがします。直接会って話してみないとわかりませんが、思考が整理されて言語化されていることは、再現性のスキル化において重要なポイントです。だから、彼女と直接話してみたいし、話してみたら、実はすごく言語化されていて、素敵だなって思うかもしれませんね。

 渋野さんは試合後に、「めっちゃ悔しい!」といった言葉を口にすることがありますが、悔しがるのはいいんです。悔しいと後悔は違いますから。私のメンタルマネジメント方法は、感情をコントロールして、ロボットになれと言っているのではありません。一生懸命やったけれど、バーディーが取れなかったら、「悔しい!」という感情を口にしたほうが、そこでその感情をリリースできるからいいんです。

 にもかかわらず、それを「いや、別に」という感じで、これもいいことなんだと言い聞かせようと我慢していくと、それをずっと背負って、溜め込んでいくんです。だから、感情をきちんと理解して言語化し、そこでリリースできるのはすごくいいこと。それを無意識にやれている感覚はいいですね。

 ただし、いかに渋野さんが心の整え方を感覚的には持っていたとしても、認知という脳が「今」「ここ」「自分」を裏切って、マインドレスに暴走し、ノンフローの海に溺れるリスクは、アスリートである以上、常に抱えています。技術の波もあるし、特に女性だから、体の波もある。それに、こうやってメディアが集まってくるわけですから(笑)。

 何度も言いますが、アスリートにとってメディアは最大の敵。メディアとどう付き合うかは、欧米のスポーツ心理学の基礎のひとつなんです。

 渋野さんがメディアに対してフランクな感じで話すのも、彼女はたぶん、メディアを特別視すると、脳が認知的に特別な反応をしてしまうので、だから、普段どおりの会話をすることで、とにかく自分を保つようにしている気がします。おそらく、それが彼女なりのメディアとの接し方なのでしょう。

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