渋野日向子が持つ「心」の凄さは?
『スラムダンク勝利学』の著者が分析

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki
  • photo by Kyodo News

スポーツドクター・辻秀一が分析 渋野日向子のメンタリティ(前編)

昨季、女子プロゴルフ界で大ブレイクを遂げた渋野日向子。身体能力の高さや、技術的に優れた面は各メディアで取り上げられているが、はたして精神的な部分ではどうなのか。『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)の著者であり、メンタルトレーナーの辻秀一先生に話をうかがって、検証してもらった――。

 結果というのは、人間が「何」を「どんな心」でやるか、というパフォーマンスの結果です。パフォーマンスの構成要素は、「内容」と「心」。「心」は「質」と言ってもいい。これは、アスリートだけの話ではなく、サラリーマンの仕事でも同じです。

 人間はロボットではないので、必ず「心」の状態が存在していて、そのうえで何かをやっている。心が乱れていると「質」が悪くなり、自分のやることがいつもどおりにできない。射撃やアーチェリーがわかりやすいですね。

 心・技・体という言葉がありますが、技のためには練習をするし、体も鍛えるけれども、日本人の場合、心だけはなぜか、気合い、根性、がんばる、我慢するといった発想になってしまう。でも、心というのは、ひとつの脳のスキルなので、いい状態を保つために、自分で意識的にマネジメントすべきものです。

 では、どういう「心」が大事なのかというと、心理学では「フロー」と言って、「ゾーン」よりもっと手前にある領域です。機嫌よく、揺らがず、囚われず、自然体でいる状態を「フロー」と呼んでいます。集中とリラックスのバランスがいい状態ですね。

 フローとは逆の、「ノンフロー」の方向に傾いたまま何かをやっていると、必ず「質」が悪くなる。常に結果は、内容と質の総合的なものであり、ゴルフはそれが一回、一回、見えやすいスポーツなんです。

「心」を大事にしている渋野日向子。全英女子オープンの優勝もフロックではない「心」を大事にしている渋野日向子。全英女子オープンの優勝もフロックではない さて、そこで本題の、渋野日向子さんがどうスゴいのか、という話です。

 私は直接、彼女に会ったことも話したこともないので、あくまでも推察ですが、全英女子オープンを勝ったということは、この心・技・体の3つがそろっていた。すなわち、正確な技術が育まれていて、4日間のトーナメントを回り切るにあたり、海外生活のなかでもきちんと体調管理ができていて、心もフローな状態にあった、ということだけは間違いない。だから、あの優勝はフロックではないと思うんです。

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