崖っぷちだったセクシークイーン。
アン・シネがひたむきプレーで得た居場所

  • 金明昱●取材・文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

 ゴルフの調子も決していい状態にはなく、彼女は崖っぷちに追い込まれていた。しかも、昨年から日本女子プロ協会の会員でなければ、QTが受けられないようになった。そのため、アン・シネは日本のプロテスト受験を余儀なくされた。

 とはいえ、アン・シネは韓国ツアー3勝の実力者。メジャー大会(KLPGA選手権)も制している。今さら、プロテストを受けることには抵抗があったはずだ。実際、彼女はプロテスト受験に向けて、相当な迷いがあったという。

「プロテストを受けることについては、本当にどうしようか迷いました。ただ、QTもそうですが、私はもう、目の前のことに立ち向かっていかなければ、次がありません。ここを通過しないと、試合に出られなくなる――そうやって、追い詰められたことで、開き直ることができたというか、プレッシャーもなくなり、逆に気持ちが楽になりました」

 そして、アン・シネは、プロテストを15位タイで一発合格。そのまま、QT突破も決めた。

 プロテストやQTは、まさしく一発勝負の世界。「うまい」「強い」と言われる選手であっても、その時の調子次第では、結果を残せないことが多々ある。そういう意味では、彼女の底力をあらためて痛感させられた。

 また、10代や20代前半の選手が集うプロテストやQTにあって、そこで一緒にプレーするアン・シネからは、かつて華やかな場所にいた、という奢りやプライドは微塵も感じられなかった。自らが生きる場所を確保するために、ただがむしゃらに、ひたむきにプレー。結果、日本ツアー参戦3年目にして、初めてツアーの出場権を自力でつかむことができた。

「日本でのツアー生活は、とてもやりやすくて、ファンのみなさんも温かく、『もっとここにいたい』という気持ちが、年々強くなっていました。だからこそ、来年(2020年)も日本でプレーできることに喜びを感じています」

 2020年シーズンについての目標を聞くと、意外にも謙虚な答えが返ってきた。

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