【木村和久連載】はや楽しみでならない「シブコ・チルドレン」の躍動 (2ページ目)

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 この親しみやすさと破壊力は、何に酷似しているか。それは、往年の名画『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年公開)ですよね。

 オーストリア・ザルツブルグのフォン・トラップ一家にやって来た家庭教師のマリア(ジュリー・アンドリュース)は、型破りな教育方針で7人の子どもたちから絶大な信頼を得ます。みんなで歌を歌って、合唱団を作り、カーテン生地で服を作り、自由と愛を高らかに宣言するのです。そんななか、ナチスの魔の手が目前に迫り、アルプス山脈を命がけで国境越えするシーンには、ハラハラどきどき。最後まで見応えのある映画です。

 その、自由奔放、天真爛漫なマリアの姿と、シブコの姿がオーバーラップして......オヤジ目線で言えば、「うちの子どものゴルフ友だちになってくれないか」「ぜひ家庭教師に」と思ってしまうんですな。

 渋野選手は、実際のトーナメントでも、ゴルフをやっていそうもない子どもに対しても、できる限り握手をしたり、サインをしてあげたりしています。子どもにとって、大スターに直接会うインパクトは、計り知れない効果をもたらします。

 およそ50年前、木村少年が故郷の石巻で北島三郎を見た時は、すげぇ感動したものです。夜公演があるなか、なぜか我が母校の湊中学のグラウンドにやって来て、野球をやっていました。おそらく全国ツアー中の、気分転換のレクリエーションだったのでしょう。

 サブちゃんは、ピッチャー。グラウンドの周りには、噂を聞きつけた地元の人々が押し寄せ、ものすごい人だかりになっていました。そして、試合が終わるや、サブちゃんは一目散に去っていきます。

 その時、一緒にいた伯母さんが、従弟のタカシを抱えてサブちゃんに突撃。「え~、何すんの!?」と見ていたら、タカシが小さい手を出すや、一瞬だけど、サブちゃんが握手してくれたんです。それには、伯母さんも、私も大感激で、以降、木村家は"北島ファミリー"に加わりました......って、ほんまかいな。

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