「自分は下手だ」と思っている渋野日向子は今季、まだまだ強くなる (2ページ目)

  • 水野光博●構成 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by Getty Images

 一方で、経験を積んだプロの場合、パターを打つ際にも、少なくとも20種類ぐらいの事を瞬時に考えます。オーバーしたらどうするか。ショートしたらどうするか。強く打てば限りなくストレートに近いが、合わせにいったらこう曲がる。その中間なら、こうだろう。これを外すと、トップと何打差になるが、次のホールでバーディーを取れる確率は? その次のホールはどうか? だったら、このパットは入れないとまずい......などなど。

 しかし、結局は(パットが)入るか、入らないか、2つに1つ。そう居直れるのが、渋野の強さです。

 渋野を見ていると、プレーが早いことに気づくと思います。「あそこを狙って、こう打つ」と決めたら、迷わない。それは、「思い切りがいい」と表現できますが、言い換えれば「未熟だから」と言えなくもありません。

 全英女子オープンで迷わずにプレーできたのも、世間を、メジャーという世界を、海外という世界を、"知らなかったから"という一面もあります。普通なら、「ミスしたら、どうしよう」とブレーキがかかります。メジャーの優勝がかかった場面ではなおさらです。

 彼女がこれから多くの経験を積んでもなお、今のような思い切りのよさが消えないか。それが今後、彼女にとっては、大きな課題となるかもしれません。

 米ツアー参戦のタイミングも、渋野の今後のキャリアを左右する、大きな決断となると思います。彼女は今季からの参戦を回避して、2021年から参戦予定であることを表明しました。

 この決断は、さまざまなメリット、デメリットがあるでしょう。

 個人的な見解では、思い切って今季から参戦してもよかったのではないか、と思っています。それは、アメリカに行ったほうが、現在の喧騒から免れ、メディアから追いかけられることも減って、とにかくトレーニングだけに集中し、時間を使うことができるからです。

 また、米ツアーという実戦の場で、いろいろな芝を経験し、慣れることが、今後世界で戦っていくうえでは必須になるからです。アメリカの多種多様の芝を早くから経験することは、プラスになることはあれ、マイナスになることはありません。

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