スーパースター渋野日向子。
タイガーに匹敵する「怖さ」を備えている

  • 水野光博●構成 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by Kyodo News

 彼女のスイングだけ見れば、「よくあのフォームで打てるな」という専門家も多いです。彼女の構えがハンドダウンしているように見えるので、あのアドレスで、あの球が打てることに、専門家は驚くわけです。

 しかし、彼女は手が長いため、それでも問題ないわけです。そして、彼女の持って生まれた運動能力と、鍛え上げられた下半身の強さで、あの豪快なフォームが成立しています。

 体の強さは、両親ともに陸上競技の投てき選手だったことが影響しているのでしょう。さらに、彼女はゴルフだけでなく、ソフトボールをやっていたこともプラスに働いています。

 ジャック・ニクラウスが、オフにバスケットボールとテニスをやっていたことは有名ですが、海外選手はゴルフ以外の競技も積極的に行なっています。というのも、身体的な向上はもちろんのこと、精神的な部分においても、重要なことだからです。

 一方で、日本人選手は、ゴルフオンリーという選手が非常に多い。おかげで、視野が狭く、何かで悩んだ際の解決法が乏しいうえ、気分転換やストレス解消がうまくできない選手がたくさんいます。

 その点、渋野は別の競技もやっていて、発散できている。それは、ものすごく大きいことです。

 技術、身体的な部分においても、ソフトボールが効果的なのは、岡本綾子プロが証明しています。彼女もソフトボールをやっていて、身体能力に優れ、ボールをとらえる能力も高く、世界で結果を出すことができました。

 ジャンボ尾崎も、オフにはよくトスバッティングをしていました。これは、クラブより重いバットを用いて、腰のキレやミートさせる力を向上させるためでした。

 渋野の長所と言えば、内面的な部分、セルフコントロールのうまさも、挙げられます。ラウンド中、笑ったり、何かを食べて待ち時間を過ごしたりする姿を見て、私は「賢いな」と思いました。

 通常、待っている時間があると、他の選手のプレーや、スコアボードが目に入ってしまい、フラストレーションが溜まり、イライラしてしまうものです。優勝争いに絡んでいるような状況ではなおさらです。

 彼女も、決して緊張しないとか、フラストレーションを感じないわけではないでしょう。近年、ガムを食べながらプレーする選手も多いように、噛むことでアゴの筋肉が刺激され、心を落ち着かせる効果があると言われています。彼女が待ち時間に何か食べるのは、それと同じで、緊張を解くためだと思います。

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