渋野日向子は「根っからの勝負師」。
村口史子が振り返る「奇跡の瞬間」

  • 柳川悠二●構成 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Kyodo News

 最終日を最終組で回るうえで、私が心配したのは、プレーのリズムでした。決勝ラウンドに入ると、2サムで行なわれます。最終日ともなれば、前の組との間隔が詰まるし、さらに優勝を争っていれば、一打、一打により時間をかける選手が出てきます。そういう環境のなかで、誰よりもプレーが早い彼女ですから、待っている間にイライラしたりして、ゴルフのリズムが崩れてしまうことを恐れていました。

 ただ、幸いだったのは、渋野さんと同組だったのが、前日も一緒に回ったアシュリー・ブハイさん(南アフリカ)だったこと。プレーのリズムがわかっていた分、回りやすかったはずです。彼女自身も、待っている時間をうまく使っていて、リラックスできていましたよね。

 得意とするバックナインに入ってからは、圧巻のプレーでした。まずは、10番(パー4)ではカラーからバーディーパットを沈め、12番(パー4)では果敢にワンオンを狙っていって、グリーンをぎりぎりでとらえました。イーグルこそ逃すも、難なくバーディー。さらに続く13番(パー4)でもスコアを伸ばして、再び首位に並びました。

 トップで並走したのは、最終日にスコアを伸ばしたリゼット・サラスさん(アメリカ)。通算17アンダーで彼女が先にホールアウトし、渋野さんが同スコアで並んで最終18番(パー4)を迎えました。

 見事なティーショットを決めたあと、彼女の背後には大勢のテレビカメラのクルーがついていきました。あれって、ゴルファーには結構プレッシャーがかかるんですよ。でも、それをものともせず、彼女はきっちりセカンドショットを打って、チャンスにつけました。

 ウイニングパットは、決してやさしくはありませんでした。2パットかな......、プレーオフかな......。彼女には申し訳ないけれど、私はプレーオフまでもつれる覚悟をしていました。ですから、彼女のパッティングの際は、グリーンの奥から、なんとなくボーッとした感じで眺めていたいんです。

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