諸見里しのぶの新たなチャレンジ「引退という言葉は使いたくない」 (2ページ目)

  • 金明昱●取材・文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

 それでも、諸見里は腐ることなく、同年のQTに挑戦。ファイナルQT32位となって、2017年シーズンは23試合に出場し(賞金ランキング124位)、2018年シーズンはファイナルQT60位の資格で25試合に出場した(賞金ランキング88位)。今季も、ファイナルQT68位となって10試合に出場したが、すべて予選落ちに終わった。

 ツアーをけん引してきたかつての輝きは、年を追うごとになくなりつつあった。そうして、33歳になった今季、現実と向き合いながら、今の自分に何ができるのか――長らく自問自答してきたという。

 諸見里がその複雑な胸中を吐露したのは、今季終盤のとあるトーナメント会場だった。

「私は、これまでの人生で、ゴルフでいろいろなことを学ばせてもらいました。まずは、(私が今ある)こうした環境でゴルフを続けられたことに、感謝しなければなりません。とても恵まれた環境にあって、また多くの人に注目していただけること、さらに周囲で支えてくれるすべての人たちに、感謝しなければなりません」

 ここ数年は振るわなかったものの、プロゴルファーとしてこれまで、第一線で戦うことができたこと――その有難さを、諸見里は身にしみて感じていた。ゆえに、そのために尽力し、サポートし、応援してくれた多くの人々に対して、心から感謝していた。そして、彼女はこう続けた。

「プロゴルファーとして、せっかくここまでやってこられたのであれば、それを今後も生かしていきたい、という思いになりました。それを、大切に、きちんと持っておいていたいんです。

 だから、完全に『引退します』という言葉は使いたくないんですよ。地元・沖縄で開催され、所属先でもあるダイキンオーキッドレディスには、推薦をいただけるのなら出場したいですし」

「引退ではない」という彼女の言葉からは、多少の未練も感じられた。しかしそれこそが、ずっと自問自答してきたなかで得た、彼女の本当の意味での"答え"なのだろう。

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