石川遼が「どん底」から今季復活。世界の頂点へ試行錯誤していること (2ページ目)

  • 柳川悠二●取材・文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Kyodo News

 今年の3月末、ゴルフ雑誌で石川のロングインタビューをする機会があった。米ツアーから撤退し、日本ツアーに復帰して2年目のシーズンとなる石川は、自身が置かれた状況を「どん底」と表現し、驚いたものだ。

「正直、自分の中では、今がどん底というか、非常に悪い状態というか、世界一が遠いというか......」

 この時は詳細を口にしなかったが、持病の腰痛がかなり悪化していたのだろう。石川は、話を聞いた直後に開催された国内ツアー開幕戦、東建ホームメイトカップの出場を回避。さらに、5月の中日クラウンズでは2日目に棄権し、それから約1カ月、戦列を離れた。

 日本ツアーに戻ってきてからも、石川が掲げる目標は「世界一のゴルファー」であることに変わりはない。目指すべきゴルフ人生を、石川はエベレスト登山に喩えていた。

「富士山に一度は登った経験のある僕が、エベレストに挑戦したんだけど、富士山に登った装備でチャレンジしてしまって、余りにも装備が足りなくて、叩きのめされた」

 そこで、一度下山し、再び富士山の頂を目指して歩み出したのが、「今の自分」だと話していた。

 そんな石川が、休養から復帰後、国内メジャーの日本プロ選手権(7月)で歓喜と涙の雄叫びをあげた。2016年8月のRIZAP KBCオーガスタ以来、3年ぶりの優勝となる復活劇だった。その後、8月には長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップで今季2勝目を挙げた。

 しかし、完全復活とまではいかなかった。日本開催のPGAツアー、ZOZO CHAMPIONSHIP(10月)で51位タイに沈むと、ドライバーの不調に苦しみ、11月前半は2試合連続の予選落ちを喫した。

 まさしく山あり谷ありの2019年シーズンを送ってきたが、最後を優勝で締めくくるのは、なんとも石川らしい。

 日本シリーズJTカップの優勝会見では、 再び自身が現在取り組んでいるゴルフを、エベレスト登山になぞらえて話した。

「エベレストに登るためには、必要なものがある。他の山に登る時には必要がなくても、世界一の山を登る時に必要になるものがある。今は、そういったものを調達したり、身につけたりして、新しい技術的な登り方を試している段階。『行ける!』と思ってジャンプしたら、40mぐらい滑落するようなこともあると思うし、ケガせずに登り切るということはない。

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