渋野日向子がビックリ。
自身のショットに「ボールがないーって」

  • 杉山茂樹●取材・文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 しかし、OBにも気落ちすることなく、スコアを再び積み上げていった勝に対して、渋野は11番から5ホール停滞。もったいないパーセーブが続いた。

 ティーショットは、ほとんどフェアウェーをとらえている。渋野がホールアウト後、「18ホール中、17ホールでパーオンしているんで、もう少しスコアを出したかったっていうのはあります」とこぼすのも当然だろう。

「パッティングに関しては、昨日(2日目)からだいぶ修正できました。読みがちょっと深すぎてとか、カップに蹴られるとか、あったんですけれど、昨日のようにストロークが悪いってことではなかった」(渋野)

 渋野に、次にバーディーが来たのは、16番のショートホールだった。182ヤードを「ユーティリティの5番で打った」というそのショットを、ピンまで1m強に寄せた。とはいえ、上からのそのパットは、繊細なタッチが要求される難しそうなラインだった。

 グリーン横には、大きな電光のスコアボードが設置されていた。渋野がそれを目にしたかどうか定かではないが、少なくとも16番グリーンの周りを立錐の余地なく埋めた大観衆には、このパットの重要性が伝わっていた。日本のトーナメントは外国に比べて観衆のマナーがいいと聞くが、数千人が一斉に息を潜める異様な雰囲気に、それはハッキリと現れていた。

 スコアボードには、その時トップを行く、ペ・ソンウと森田遥の名が最上段に記され、スコアは16アンダー。その下に、同組の勝、さらには申ジエ、鈴木愛ら有力選手が名を連ね、渋野はトップと5打差の11アンダーで、9位タイに甘んじていた。

 時は3日目の終盤だ。これ以上離されると、いくら爆発力のある渋野といえども、優勝は現実的に厳しくなる。16番のバーディーパットは、まさしく伸るか反るかをかけた一打となった。

 渋野が構えて、ストロークする。カップがボールに吸い込まれた瞬間、周囲にこだましたのは、歓喜というより、安堵するような歓声だった。

 渋野本人の思いはどうだったのか。続く17番、打ち下ろしの2オン可能なパー5のティーショットに、それは現れていたような気がする。

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