渋野日向子に人を引きつける魔力。
取材対応に見たコメント力と大物感

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 続いては、台風直撃で2日目の競技が中止になった前日について。

「(ホテルの)部屋から一回も出ず、ずっとベッドのうえで寝っ転がったり、座ってゴハンを食べたり、映画を見たりしてました」

 そのときに見た映画は、『ボビー・ジョーンズ ~球聖と呼ばれた男~』、『グレイテスト・ゲーム』の2本だそうで、いずれもゴルフを題材にしたもの。前者は、かつてグランドスラムを達成した伝説のゴルファー、ボビー・ジョーンズの生涯を描いたもので、後者は、アマチュアゴルファーであるフランシス・ウィメットが優勝した、1913年の全米オープンを舞台とした物語である。

「携帯をいじりながら、見てたんですけど(笑)」という渋野も、勝ち続けることでプレッシャーがかかり、手が震えてくる主人公のジョーンズを見たときには、「(自分は)まだ勝ち続けてはいないですけど(苦笑)、ああ、わかるなって思いました」。

 また、「私、映画とか見ると、結構感情移入しちゃって泣いちゃうんです」という渋野は、ウィメットとその父親(渋野曰く、ウィメットがゴルフをすることに反対していたという)が試合後に顔を合わせるシーンでは、「めっちゃ泣いた(笑)」そうである。

 朗らかに話し続ける渋野は、自身の"プレッシャーで手が震えた瞬間"についても語った。

「(奇跡の逆転優勝を飾った)デサントレディース東海クラシックの(最終日の)17番とか、(全英女子オープン後、最初の国内メジャー)日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯の最終日の17番。(決めれば優勝という)NEC軽井沢72トーナメント(の18番のバーディーパット)もそうだし、コニカミノルタ杯の1日目の9番のパーパットも。(ツアー初優勝を飾った)ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップも、最終日の17番のパーパットは震えましたね。覚えているのはそれくらいかな。全英のあとが多いです」

 それでも、「一番は、やっぱり軽井沢の最後の3パット」と渋野。首位タイで迎えながら自滅する形で"凱旋優勝"を逃した2カ月前の試合を、少し悔しそうに振り返った。

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