渋野日向子がまた魅せた。奇跡の逆転優勝も起こり得た濃密な9ホール (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 しかし、言い方を変えれば、4つもチャンスを逃したにもかかわらず、9ホールで4ストロークも伸ばし、25位タイから6位タイまで順位を上げたのである。だからこそ、渋野は「最終的に4つ伸ばしたんで、上出来だと思います」と、最終日のラウンドを評価する。

「アプローチでふたつチップインが取れたのが、結果がよかったのにつながったかなと思いますし、17番でアプローチミスをしてからの(グリーンの)外からのパーパットを決められたのもよかったかなと。9ホールだけだったので、最初から攻めの気持ちでいけたのがよかったかなと思います」

 そして渋野は、「パッティングとアプローチに今、ちょっと不安があるので、再来週(の試合)までに調整していきたい」と課題を口にしつつも、「今日はかなりトップと差がありましたし、たぶん全部バーディーを取らないと優勝はできないなと思っていたんで。なるべく順位を上げたいなと思ったなかで、自分のいいゴルフができた」と語り、6位タイでのフィニッシュにも納得の表情を見せていた。

 とはいえ、見る者を和ませる穏やかな笑顔とは裏腹に、渋野は逆転戴冠への意欲をはっきりと口にする。賞金女王の座に就くためには、ここからが本当の勝負――。彼女の言葉からはそんな強い覚悟がうかがえる。

「賞金女王になるためには、残り数試合は全部、確実に上位争いをしていかないといけないと思うので、ひとつひとつ大事に、一打一打大事に、しっかりがんばりたいなと思います」

 3日間のトーナメントのうち、2日目は中止となり、最終日は半分に短縮されたうえ、ギャラリーを入れない無観客試合として行なわれた。出場する選手たちがモチベーションや集中力を保つことは、決して簡単ではなかったはずである。

 そんな異例の条件下でも、渋野は優勝こそ逃したものの、確実に賞金250万円を加算。賞金ランクトップの申ジエとの差を、およそ600万円にまで詰めてみせた。

 手ごたえと悔恨が交錯した、わずか9ホールの短期決戦。それでも"全英女王"の強さは、十分に伝わってきた。

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