【木村和久連載】疲労もストレスも半減。「救世主」乗用カートに敬礼 (2ページ目)

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 結局、残り3ホールほどは、私は足を引きずってのラウンドとなりました。歩き方が悪いと、足の指に突然マメも出来て、ほんと踏んだり、蹴ったりです。

 やっぱりね、毎週試合だけで3~4ラウンド、練習ラウンドやプロアマも含めれば5~6ラウンド、歩いてプレーしているプロ選手は"超人"だと思います。

 さて、乗用カート愛好歴25年の私としては、決してサボリじゃなくて、歩いていると足が痛くなるからカートに乗るのですが、どうもそれが理解されないようで悲しいです。

 たとえば、こんなこともあります。ボールを打ったらすぐにカートに乗ると、同伴メンバーが「おまえ、たまには歩けよ」的な視線を投げかけてくるのです。言葉に出して言わないけど、おそらく「歩かないから、ぶくぶく腹が出るんだ」とか、「いつもカートでふんぞり返って、何様のつもりだ」とか、そんなことを思っているんだろうな、とそこはかとなく感じています。被害妄想かもしれませんが......。

 だから、アスリート的な人とラウンドするのは、やや苦手です。だって、そういう人はナイスショットをしたら、すぐに走るんだもん。逆に、小太りの方には共感を抱きます。打ったら、すぐにカートに乗ってタオルで顔を拭くって、実に微笑ましいじゃないですか。

 そもそも乗用カートって、1958年頃、アメリカで開発された乗り物で、すぐさま全米中に普及しました。

 その頃、アメリカではプロトーナメントのテレビ中継が始まり、ロバート・トレント・ジョーンズが設計した池絡みのロングホールなどで、パワーヒッターのアーノルド・パーマーが果敢に2オンを狙う――そういう姿が放映されて、空前のゴルフブームとなり、ゴルフが一気に大衆化したのです。

 そうした状況ですから、乗用カートの登場は爆発的な破壊力があったと思います。気分的には、ノーベル賞ぐらいの発明だったのではないでしょうか。

 だって、当時のアメリカでゴルフをやる人って、社会的な成功者でお金持ち。そういう人は、たいがい太っていて、恰幅がいいですからね。そんな彼らの思考を想像すれば、「流行りのゴルフはしたいし、お金もある。けど、長時間歩くのは苦手」。当然、乗用カートに飛びついたことでしょう。

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