【木村和久連載】渋野日向子、「数字の取れる選手」がついに降臨 (3ページ目)

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 全英女子オープンの最終18番ホールのウイニングパットは圧巻でした。同ホールを迎える前には、ギャラリーとハイタッチしまくりで、グリーンに上がってくる時には、大ギャラリーの歓声に満面の笑顔で応えていました。パットの際には、外すとプレーオフといった重圧をまったく感じませんでした。

 周囲から力をもらう発想が、今までの日本人選手にはありませんでしたよね。

 最後の勝負どころにおいて、入れば7200万円、さらに歴史的な快挙達成というバーディーパットをすぐに打てますか? 外して負けたら、賞金は半分以下ですよ。栄誉も何もありません。

 それを、あっという間に打ってしまう渋野選手の姿を見て、「あれぇ~」って思いましたよ。子どもの時から『巨人の星』を見て育っている我々世代からすれば、大事なアクションの前には、必ずひと呼吸あって、「目に炎を燃やしてから」って思うんですよね......。

笑顔が素敵な渋野日向子選手。彼女のおかげで、ゴルフファンが急増したことは間違いないでしょう笑顔が素敵な渋野日向子選手。彼女のおかげで、ゴルフファンが急増したことは間違いないでしょう それはともかく、「ゴルフは楽しい」という考えは、もし負けたとしても、渋野選手は"絵"になるってことです。負けても数字が取れる選手ってことは、ローラ・ボーの再来ですよ。

 ちなみに、ローラ・ボー選手というのは、昭和に活躍した美人ゴルファーです。圧倒的な人気がありましたが、成績は今ひとつでした。日本のゴルフ出版物で一番売れたのが、ローラ・ボー写真集とカレンダーと言われていて、某ゴルフ出版社の社屋は「ローラ・ボービル」と、いまだに言われています。

 勝敗に関係なく人気があるって、プロの世界じゃ"無双"ってことで、まさに敵なしです。加えて、今の渋野選手の状態からすれば、年内に2、3勝しそうな勢いですし、賞金女王にはリーチがかかったも同然。その人気はどこまで上昇していくのか、想像もできません。

 それにしても、アマチュアのオジさんから見ても、渋野選手のパターは男勝りで超絶でした。外れてオーバーしてもいいから、ガツンと入れるって、あり得ないです。世界のどんなプロにもマネできないパターです。

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